研究課題/領域番号 |
22K15484
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小久保 幸太 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (20907711)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | Memory Th2細胞 / 酸化ストレス / Txnip / アレルギー性疾患 / 喘息 / Memory CD4+ T細胞 / Single cell RNA-Seq / Epigenetics |
研究開始時の研究の概要 |
抗原特異的memory Th2細胞形成は、アレルギー性疾患の発症・悪化に主要な役割を果たしている。研究者らはこれまでに、酸化ストレス除去機構の制御因子であるTxnipが、memory Th2細胞形成を介して気道炎症を悪化させることを明らかにした。そこで、本研究では、Txnip欠損マウスを用いて1)酸化ストレス関連遺伝子群の発現変動 2)その上流の転写因子に対するTxnipの働き 3)その転写因子を過剰発現させた際の表現型 を解明することにより、Txnipによる酸化ストレス除去の新規分子メカニズムを明らかにすることで、アレルギー性疾患の新たな治療法開発への分子基盤を構築することを目指す。
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研究実績の概要 |
喘息をはじめとするアレルギー性疾患の患者数は先進国、発展途上国を問わず増加の一途をたどっている。アレルギー性疾患の発症・悪化には、抗原と反応したeffector Th2細胞からのmemory Th2細胞形成が主要な役割を果たしている。我々は今年度までに、酸化ストレス除去機構の制御因子であるTxnipがmemory Th2細胞形成を介して気道炎症病態を悪化させることを明らかにした。本研究ではTxnipがmemory Th2細胞形成を促進する分子メカニズムを明らかにすることで、アレルギー性疾患および喘息の新規治療法開発への分子基盤の構築を目指した。 本研究は、Txnipを研究対象として用いることで、これまで未解明であった「喘息の病態形成における酸化ストレス量制御の役割」を明らかにすることを目的とした。これまでの研究により我々は、Txnipが酸化ストレス除去に働き、アポトーシスを抑制することを発見している。また、Txnipがmemory Th2細胞形成を介して気道炎症病態を悪化させることも確認している。しかし、memory Th2細胞形成を促進するTxnipの酸化ストレス除去には、これまで報告されていた分子メカニズムが関与しないことが明らかになった。そこで、令和4年度においては、Txnipが酸化ストレス除去に働く新規分子メカニズムをSingle cell RNA-SeqやBulk RNA-Seq, ATAC-Seqを用いて解析した。Txnipが気道炎症病態に影響することは新たな発見であり、その分子メカニズムが明らかになることで、酸化ストレス量の制御機構を標的としたアレルギー性疾患の新規治療法開発につながる可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Txnipによる新規の酸化ストレス除去機構を探索するために、まずは遺伝子発現を解析した。具体的には、野生型Th2細胞とTxnip欠損Th2細胞を用いたsingle cell RNA-Seqを行った。memory Th2細胞の形成過程においては、effector Th2細胞様とmemory Th2細胞様の遺伝子発現パターンを示すTh2細胞が混在するため、細胞集団全体を用いた従来のRNA-Seqでは、どちらかの細胞集団内の変化のみを区別して検出することができない。しかし、single cell RNA-Seqを用いることで、memory Th2細胞形成を開始した細胞集団に限定して、Txnip欠損による遺伝子発現変動を単一細胞レベルで詳細に解析できた。そして、酸化ストレス除去を誘導する転写因子であるNrf2によって活性化する遺伝子発現パスウェイが、Txnip欠損Th2細胞で減弱していることを明らかにした。さらに、Txnip欠損Th2細胞でNrf2タンパク質の発現が低下していることも確認された。また、Nrf2の下流に存在する酸化ストレス除去タンパク質であるBlvrbが、Txnip欠損Th2細胞で発現低下していることが明らかになった。ATAC-Seqによる解析の結果、BlvrbはTxnip欠損Th2細胞においてエピジェネティックに発現抑制されていることも観察された。つまり、Txnip欠損Th2細胞においては、Nrf2のタンパク質発現が低下することでその下流のパスウェイの遺伝子発現が低下する。続いて、そのパスウェイに含まれるBlvrbがエピジェネティックに発現抑制されることで、細胞内の酸化ストレス量が上昇することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記の解析から検出された新規酸化ストレス除去機構の候補について、レトロウイルスによる遺伝子過剰発現系を用いて検討する。具体的には、Txnip欠損Th2細胞において発現変動していたBlvrbを含む酸化ストレス除去関連の遺伝子に関して、Nrf2などの上流の転写因子の中で発現低下していたものを過剰発現させて、Txnip欠損の表現型が回復するのか評価する。評価項目としては、memory Th2細胞の形成過程におけるTxnip欠損Th2細胞中の酸化ストレス量とアポトーシス(Annexin V+ 細胞の割合)を用いる。また、同様の遺伝子過剰発現系を、Blvrbを含む酸化ストレス除去関連の遺伝子に対しても行うことで、より詳細に分子メカニズムを検討する。 過剰発現させることで酸化ストレス量の減少とアポトーシスの減弱を誘導した遺伝子については、続けてmemory Th2細胞形成への影響も検討する。具体的には、当該の遺伝子を過剰発現させたTxnip欠損effector Th2細胞をマウスへと移入して、memory Th2細胞形成が完了する約4週間後に各組織中のmemory Th2細胞数を測定する。遺伝子の過剰発現によってTxnip下流の新規酸化ストレス除去機構が活性化することで、Txnip欠損Th2細胞で観察されていたmemory Th2細胞数の減少が回復することが期待される。
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