研究課題/領域番号 |
22K15516
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
日暮 大渡 昭和大学, 薬学部, 助教 (50882487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ミトコンドリア / 呼吸鎖複合体I / NAD+ / SIRT3 / SIRT7 / p21Cip1 / SIRT6 / NAD / p21 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの癌細胞では好気的解糖が観察されることから、癌細胞における呼吸鎖の重要性は疑問視されてきた。一方で、呼吸鎖機能を維持しようとする現象も観察され、癌細胞は生存/増殖に呼吸鎖機能を必要としていることが示唆される。しかし、その必要性について、未だ不明な点は多い。 申請者は、乳癌細胞において、p21Cip1の転写制御が、呼吸鎖複合体Iの産生するNAD+によるヒストンのアセチル化制御に基づくことを突き止めた。本研究では、この複合体I由来のNAD+を介したエピジェネティックなp21Cip1発現制御メカニズムを解明する。成果として、当該経路を標的とした癌治療薬開発への貢献を目指す。
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研究成果の概要 |
呼吸鎖複合体IのNADH脱水素酵素を阻害すると、NAD+レベルの低下に伴いp21Cip1が発現誘導される。この時、NAD+の低下によりSIRT7の活性が低下し、p21Cip1の転写開始点付近において、H3K18のアセチル化が亢進することが明らかとなった。さらに、NAD+の低下はSIRT3の活性低下も引き起こし、これはp21Cip1を翻訳レベルで増加させることを見出した。以上のことから、癌細胞は呼吸鎖複合体I活性によりNAD+を産生することでp21Cip1の発現を抑制し、増殖能を維持していることが示唆された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
癌細胞の代謝は一般に解糖系に依存しているが、一方で、本研究の成果によると、呼吸鎖複合体ⅠによるNADHからのNAD+の再生が十分に行われないと、SIRT3/SIRT7の活性が低下して翻訳/転写レベルでp21Cip1が誘導され、癌細胞は増殖できなくなる。従って、呼吸鎖活性も癌細胞の増殖能維持に必須である。実際、複合体Ⅰの構成サブユニットの高発現はLuminal型乳癌の予後不良因子であった。従って、呼吸鎖複合体Ⅰ活性を標的とする癌治療はLuminal型乳癌に有望なアプローチとなることが期待できる。
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