研究課題/領域番号 |
22K15531
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田村 亮太 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60649961)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | NF2 / 神経鞘腫 / 低酸素 / 微小環境 / 神経線維腫症2型(NF2) / 免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
2022年度は、保有する神経鞘腫組織及び培養細胞を用いて、NF2関連シグナルと低酸素応答の関連を解析する。HIF-1αの発現抑制及び強制発現を行うことで、in vivoでの造腫瘍能も評価する。2023年度は、組織や動物モデルを用いて、低酸素応答と神経鞘腫内微小環境の関連を解析する。HIF-1α/VEGF-A・VEGFRsシグナルや、その下流のシグナル、さらにはそれらのシグナルにより動員される腫瘍免疫微小環境の解析を行う。この2年間の結果を元に、最終年度でNF2 神経鞘腫に対する新たな治療戦略を提言する。
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研究実績の概要 |
神経線維腫症2型(NF2)は、merlin遺伝子変異に基づく多発神経鞘腫を主徴とする稀少難治性遺伝疾患であり、根本的治療法は未だ存在しない。我々は、予備実験でNF2の神経鞘腫内に低酸素環境が存在し、腫瘍の増大と関与する知見を得ており、未だ報告がない新規所見である。そこで本研究課題では、難治性NF2における低酸素や腫瘍免疫微小環境を基盤とした新たな病態を、貴重な臨床検体や動物モデルを用いて構築し、低酸素や腫瘍免疫微小環境を統合的に標的とする新たな治療戦略を提言する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、NF2関連神経鞘腫及び孤発性神経鞘腫のヒト検体を3例、15例得ることに成功し、HIF-1α,VEGF-A, VEGFR1, VEGFR2を中心に遺伝子発現を解析した。コントロールにこれらの経路が高発現していることで知られている膠芽腫症例を使用した。その結果、両神経鞘腫瘍はGrade 3程度のhigh grade gliomaに相当する高発現を示した。さらに過去のNF2関連神経鞘腫検体22例、孤発性神経鞘腫症例21例の過去の組織検体を用いてタンパクレベルでもそれぞれの高発現を示した。 NF2関連神経鞘腫及び、孤発性神経鞘腫の初代継代は良性腫瘍故に悪性腫瘍ほどの成功率は示さず、やや苦戦したが最終的に、それぞれ2例、3例の大変貴重な細胞株の樹立に成功した。それらの細胞株に関しても、HIF-1α,VEGF-A, VEGFR1, VEGFR2の高発現を遺伝子発現レベルで評価した。現在、低酸素環境における造腫瘍能評価を行い、HIF-1αの発現抑制及び強制発現の準備を行っている。 また、神経鞘腫はヒトでは前庭神経に生じることが多く聴力障害が生じることが非常に重要な特徴であるが、聴力障害を安定して生じるモデルの樹立報告は少ない。私達は定位移植装置を用いて、マウスの小脳橋角部に移植する技法を編み出し、聴力障害を来すin vivoモデルを樹立することに成功しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
低酸素環境下でのNF2関連神経鞘腫及び、孤発性神経鞘腫の造腫瘍能評価を引き続き行い、低酸素環境が神経鞘腫に及ぼす影響を明らかにする。その後、HIF-1αの発現抑制及び強制発現を行い、in vivo モデルで腫瘍増大の差異を評価する。さらに、HIF-1α/VEGF-A・VEGFRsシグナル下流の腫瘍免疫微小環境の解析をまずは、組織学的に行い、NF2関連神経鞘腫及び、孤発性神経鞘腫における腫瘍免疫微小環境の意義を明らかにする。 その後、マウスNF2自然発生腫瘍モデル P0-SchΔ(39‐121) line 27を用いて、上述したHIF-1α/VEGFR1・2シグナル及びTreg、TAM、MDSC等の主要な免疫抑制性細胞の発現を解析し再現性をみる。
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