研究課題/領域番号 |
22K15542
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
羽原 誠 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (60846525)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ER陽性乳がん / 乳がん / プロリン異性化酵素 / エストロゲン受容体 / ER / FKBP / FKBP52 / NanoBiT / FKBP51 |
研究開始時の研究の概要 |
乳がんの患者数は多く、罹患数ならびに死亡数は増加の一途を辿っている。中でもエストロゲン受容体α(ERα)陽性乳がんは患者数最多の乳がんである。 大規模データベースの解析からERα陽性乳がん組織にFKBP52という遺伝子の発現が多いと患者の生存期間が短縮することを見出した。これまでの研究でFKBP52がERαの機能を増強し乳がん細胞の増殖に必須であることを明らかにしたが、FKBP52によるERαの制御については未だ不明な点が多い。そこでFKBP52とERαの関係性に注目して研究を進め、ERα陽性乳がんにおけるFKBP52の機能を解明し、得られた結果を基にERα陽性乳がんの新規治療法の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、独自に同定したエストロゲン受容体(ERα)陽性乳がんの予後不良因子プロリン異性化酵素FKBP52(FK506 Binding Protein 52)の機能を解明し、プロリン異性化によるがん増殖制御メカニズムを解明することである。 FKBP52によるERα安定化メカニズムとしてユビキチンリガーゼであるBRCA1の関与を見出し、BRCA1がERαを安定化することを明らかにした。R5年度はリコンビナントBRCA1によるin vitroユビキチン化アッセイ系を構築した。またFKBP52のホモログであるFKBP51はERαを不安定化させる。FKBP51と結合するユビキチンリガーゼに着目して、FKBP51によるERα不安定化メカニズムの解明を進めている。 FKBP52阻害による抗がん剤の創出を目指して、FKBP52を阻害する低分子化合物のスクリーニング系の検討、構築を進めた。R5年度は構築したNanoBiT法によるFKBP52とERαを含むFKBP52標的分子間の相互作用モニター系のスクリーニングに向けた改良を行った。具体的にはNanoBiT融合タンパク質の発現量の調整や安定発現株の樹立を試みている。また、化合物候補を選別するためFKBP52に結合する化合物の取得を目的として、リコンビナントFKBP52タンパク質の大量精製系を構築した。異性化酵素活性の測定については引き続き蛍光プローブ、発光プローブを使用したハイスループット測定系の構築を検討している。 以上の様に、FKBP52によるERα制御メカニズムの解明や阻害剤スクリーニング系の構築を進め、FKBP52を標的とした乳がんの新規治療法開発を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FKBP52によるERα安定化メカニズムの解明を進め、ユビキチン化アッセイ系の構築や新たなERαを制御するユビキチンリガーゼの候補の解析を行った。BRCA1によるユビキチン化はユビキチン化複合体の構成因子により性質が異なるため、BRCA1以外の構成因子の検討で時間がかかり、やや遅れている。 治療抵抗乳がん細胞株ならびにin vivo(Xenograftマウス)におけるFKBP52阻害の抗腫瘍効果は予定より早く完了しており、通常の乳がん細胞株におけるFKBP52阻害と同様、抗腫瘍効果を示すことを明らかにしている。FKBP52 KOマウスを用いた発がんにおけるFKBP52の役割は計画通りこれから実施する予定である。 FKBP52阻害剤の探索については、NanoBiTスクリーニング実施前に結合低分子化合物の選別、NanoBiT系の改良を検討しており、スクリーニングの実施はR6年度になる予定である。プロリン異性化酵素活性の測定については当初計画していたペプチドpNAを変更してスクリーニングに適した蛍光プローブ、発光プローブによるハイスループット異性化酵素活性測定系の構築を検討している。 総じて抗腫瘍効果の検討は完了したが、一部の実験において計画の変更を行ったためやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究成果から、FKBP52ならびにFKBP51によるERα制御メカニズムとしてユビキチンリガーゼの介在に注目している。今後はBRCA1のin vitroユビキチン化アッセイによるERαのユビキチン化の検討やFKBP51関連ユビキチンリガーゼについてBRCA1の解析時と同様の方法でERαの安定性、活性や分子間相互作用、ユビキチン化の観点から解析を行う予定である。 スクリーニングについてはリコンビナントFKBP52タンパク質を用いた結合化合物のスクリーニングを進めるとともに、スクリーニングに適したNanoBiT系の構築やプロリン異性化酵素活性測定系の構築を行う。異性化酵素活性測定系では異性化標的となるプロリンを含むペプチド配列が先行研究で十分に検討されていないため、構築の簡単な分割ルシフェラーゼ系で異性化酵素活性に適したペプチド配列の探索を行う予定である。スクリーニングで取得した化合物は細胞や腫瘍移植マウスに処置し、ERαの安定性・活性、細胞増殖への影響などを評価する。これらの評価はFKBP52ノックダウン細胞の解析で既に確立した方法と同様に行う予定である。 in vivo解析については当初の計画通り、FKBP52 KOマウスと乳がんモデルマウスをかけ合わせて、乳がんの発症率を評価し、乳がんの発がん段階におけるFKBP52の役割について検討する予定である。モデルマウスの作出には研究支援プラットフォームの利用を予定している。
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