テロメラーゼ逆転写酵素による遺伝子発現制御が標的とする新規遺伝子の同定

• 研究課題/領域番号: 22K15550
• 研究種目: 若手研究
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 小区分50010:腫瘍生物学関連
• 研究機関: 国立研究開発法人国立がん研究センター
• 研究代表者: 町谷 充洋 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (90759523)
• 研究期間 (年度): 2022-04-01 – 2024-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2023年度)
• 配分額: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円); 2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円); 2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
• キーワード: テロメラーゼ逆転写酵素hTERT / RNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRP) / TERRA / R-loop / テロメラーゼ / RNA依存性RNAポリメラーゼ / 二本鎖RNA / ncRNA

研究開始時の研究の概要

近年、アンチセンスRNAのような、遺伝子をコードしないnon-coding RNA (ncRNA) が発がんに影響することが明らかにされてきた。一方で、研究が進んでいるのは特定のncRNAに限定されており、ほとんどのncRNAの発現機構や生理学的意義は未解明である。本研究では、がん細胞においてhTERTに結合するRNAを網羅的に解析することで、hTERTのRNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRP) 活性により合成されるRNAを同定し、RdRP活性による遺伝子発現制御が、発がん過程に与える影響の分子基盤の解明を目指す。本研究成果は、新たな抗がん戦略の創出に寄与することが期待される。

研究成果の概要

近年、発がんにおけるnon-coding RNA (ncRNA) の影響が明らかにされてきたが、ncRNAの発現機構や生理学的意義は未解明な部分が多い。申請者のグループは、テロメラーゼ逆転写酵素hTERTがRNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRP) 活性を示し、アンチセンスRNAを合成することで、腫瘍形成を促進することを明らかにしてきた。本研究では、RdRP活性による発がん促進機構を解明するために、がん細胞においてhTERTに結合するRNAの解析を実施した。その結果、hTERTのRdRP活性は、TERRAが形成するR-loop構造を解消し、ゲノム安定性に寄与することが明らかになった。

研究成果の学術的意義や社会的意義

テロメア伸長に関わるテロメラーゼ逆転写酵素hTERTは、多くのがんで発現が上昇しており、発がんに直接関わるため、重要な抗がん戦略の分子標的として研究されてきたが、未だにhTERTを標的とした治療法の開発には至っていない。本研究において、hTERTのRdRP活性が、TERRAが形成するR-loop構造を解消し、がんの生存に寄与することを明らかにした。本研究成果は、hTERTに着目したがん治療研究を進める大きな一歩になるに違いない。

研究成果

• [雑誌論文] Maintenance of R-loop structures by phosphorylated hTERT preserves genome integrity. (2024)
  • 著者名/発表者名: Machitani M, Nomura A, Yamashita T, Yasukawa M, Ueki S, Fujita K, Ueno T, Yamashita A, Tanzawa Y, Watanabe M, Taniguchi T, Saitoh N, Kaneko S, Kato Y, Mano H, Masutomi K.
  • 雑誌名: Nature Cell Biology 巻: In press.
  • 査読あり
• [学会発表] Maintenance of R-loop structures by phosphorylated hTERT to preserve genome integrity. (2023)
  • 著者名/発表者名: Machitani M, Nomura A, Yamashita T, Ueno T, Yamashita A, Taniguchi T, Kaneko S, Kato Y, Mano H, Masutomi K.
  • 学会等名: CSHL Meeting-Telomeres & Telomeras-
• [学会発表] R-loop regulation by RNA-dependent RNA polymerase activity of hTERT. (2023)
  • 著者名/発表者名: Machitani M, Nomura A, Yamashita T, Yamashita A, Saitoh N, Masutomi K.
  • 学会等名: 第24回日本RNA学会年会
• [学会発表] Synthetic lethality by inhibition of RNA dependent RNA polymerase activity and the Fanconi anemia/BRCA pathway. (2023)
  • 著者名/発表者名: Machitani M, Nomura A, Yamashita T, Ueno T, Yamashita A, Taniguchi T, Saitoh N, Kaneko S, Kato Y, Mano H, Masutomi K.
  • 学会等名: 第82回日本癌学会学術総会
• [学会発表] Maintenance of genome integrity by RNA-dependent RNA polymerase activity of hTERT. (2023)
  • 著者名/発表者名: Machitani M, Nomura A, Yamashita T, Yamashita A, Saitoh N, Masutomi K.
  • 学会等名: 第46回日本分子生物学会年会
  • 招待講演