研究課題/領域番号 |
22K15560
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
阿部 俊也 九州大学, 大学病院, 助教 (20722028)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 膵癌 / microbiome / 癌微小環境 / 遺伝子変異 / 膵癌周囲微小環境 / Microbiome / 次世代シーケンシング (NGS) / 腸内細菌叢 |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌は予後不良な疾患であり、その原因として膵癌に特徴的な周囲微小環境との癌間質相互作用が挙げられ、近年では腸内細菌や腫瘍内細菌との関連も報告されている。また膵癌は多様な体細胞遺伝子変異(KRAS、TP53など)を特徴とするがこれらをターゲットとした有効な治療法は存在せず、宿主の遺伝子変異と癌関連Microbiomeとの関係は不明である。本研究では、膵癌周囲の微小環境との癌間質相互作用に加えて、NGSを用いて膵癌組織の体細胞変異など後天的な遺伝子変異を解析することにより、これら遺伝子変異と膵癌の発癌や遠隔転移に促進的・抑制的に関わる腸内細菌や腫瘍内のMicrobiomeとの関連を明らかにする。
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研究実績の概要 |
まず、臨床的な評価として、膵癌切除患者の治療介入前の口腔機能を評価した臨床データと化学療法、転移形成、予後の比較を行ったところ、口腔内環境の条件と、化学療法の効果や予後に有意差は得られなかった。現在も症例の蓄積および術後経過フォローを行っており、今後も解析を継続していく。 続いて、ヒト膵癌組織を用いて細菌の構成成分であるLPSを抗LPS抗体による免疫組織化学染色検査で評価したところ、膵癌の約60%で腫瘍内細菌の存在を確認した。正常膵組織にはLPSは検出されなかった。蛍光標識した細菌が膵癌細胞株に取り込まれることをTime-Lapse imagingでリアルタイム撮影することに成功した。 また、膵癌自然発生マウス由来の膵癌細胞株をマウスに同所移植し、腸内細菌叢の変化についてNGSによるメタゲノム解析を行なった。膵同所移植群では、プロバイオティクスとして注目されている"Akkermansia"の糞便内での減少を認めた。"Akkermansia"は膵癌抑制性に働くMicrobiomeの候補と考えられる。 さらに、特定の歯周病菌により、膵癌細胞の遊走能の亢進を認め、歯周病菌の刺激により癌細胞における免疫抑制性に働く免疫細胞を誘導するケモカイン産生が促進されていることを同定した。また、膵癌細胞株を皮下移植したマウスの腫瘍内に歯周病菌を投与すると、腫瘍の増大を認めた。膵癌細胞株を膵同所移植したマウスの口腔内に歯周病菌を投与し、腫瘍の増大や腫瘍微小環境をフローサイトメトリーで評価したが、腫瘍の増大や腫瘍微小環境の有意な変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト正常膵組織ではなく、膵腫瘍内にmicrobiomeが存在することが確認できた。 膵癌自然発生マウス由来の膵癌細胞株をマウスに同所移植し、腸内細菌叢の変化についてNGSによるメタゲノム解析を行ない、膵同所移植群では、プロバイオティクスとして注目されている"Akkermansia"の糞便内での減少を認め、膵癌の抑制性に働くMicrobiomeの候補である。 また特定の歯周病菌が腫瘍の増大や進展に影響を与えていることが示唆される結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は遺伝子改変膵癌自然発生マウスを用いて、定期的にマウスを解剖し、正常膵組織、PanIN、膵腫瘍、肝転移巣における遺伝子変異とmicrobiomeとの関連、評価を進める予定である。 また遺伝子改変膵癌自然発生マウスを用いて、化学療法や抗生剤との併用による、特定の細菌をターゲットとした治療効果判定を行う。
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