研究課題/領域番号 |
22K15573
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
飯島 友加 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 流動研究員 (40726923)
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研究期間 (年度) |
2023-01-20 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 小児急性リンパ性白血病 / 微小残存病変 / ゲノム構造異常 / 白血病 / Ig/TCR遺伝子再構成 / ロングリードシーケンス |
研究開始時の研究の概要 |
小児急性リンパ性白血病の治療において、微小残存病変(Minimal residual disease ; MRD)の測定は予後予測や治療選択において重要な要素である。日本では主にイムノグロブリン(Ig)とT細胞受容体(TCR)という遺伝子の配列が患者特異的なマーカーとしてMRD測定に用いられているが、約10%の症例では特異的なマーカーが得られず、MRD測定が出来ない。そこで本研究では、マーカーが得られない理由を調べるために、ロングリードシーケンス法を用いて、Ig/TCR遺伝子の配列を詳細に解析する。また、マーカーが得られない症例の特徴について既存のデータと合わせて解析を行う予定である。
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研究実績の概要 |
BCP-ALLとT-ALLにおいて、クローナルなIg/TCR再構成が検出されない症例と、BCP-ALL症例におけるIgH再構成未検出かつIgKもしくはIgL遺伝子再構成が検出される(IgH(-))症例の選定を目的として、以前に行ったshort read sequencingのデータを使用した ① vidjilによるIg/TCR再構成クローンの同定、② Genomonによる欠失や転座、逆位といったようなゲノムの構造異常、③ シーケンス深度(depth)から推測される欠失などの構造異常について解析を行った。①の解析から、BCP-ALLでは、760例中22例(約3%)で、いずれのIg/TCR遺伝子再構成も検出されず、1例を除きゲノムの構造異常は検出されなかった。また、IgH(-)症例は29例(約4%)で、IgH遺伝子領域に欠失や逆位、転座などの多くの構造異常が検出されたが、一意的にIgH再構成が検出できない原因を特定することは困難であった。一方、両アリルにIgH領域の欠失が確認された領域についてRQ-PCRを行い、IgH以外の再構成をターゲットとした微少残存病変(MRD)の値と比較したところ良く相関しており、IgHの欠失がMRDのターゲットとして機能する可能性が示唆された。T-ALLでは105例中36例(34%)でIg/TCR遺伝子再構成は検出されず、欠失などのゲノムの構造異常も検出されなかった。 Long read capture sequenceの準備として、ニードルと超音波のよるDNA断片化を検討した。ニードルでは20-25kbの揃った長さに断片化可能であったが、それ以上短くすることは困難であった。一方超音波を使用した場合には、ブロードではあるが、数キロから数十キロをピークとした断片化が可能であり、こちらを採用することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を計画した当初は、capture法によるlong read sequencingの手法は確立されておらず、当研究室で行っていた予備実験でも、1-3kbに断片化したDNAから~1kbのリードが得られる程度であったため、全ゲノムのlong read sequencingとの併用を考えており、まずこちらを実行するつもりであった、しかし、R5年の夏から秋にかけて、複数の試薬会社からcapture法によるlong read sequencingの手法について提案を頂き、検討・準備に対し時間を要したため、long read sequencingの実施が少し遅れている。R5年度末において、試薬等の準備が整ったため、R6年度に順次シーケンスを行う予定である。全ゲノムのlong read sequencingについては、capture法の結果を見て必要性を判断することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、現在準備を進めているONT社のnanoporeシーケンサーを用いた、target capture long read sequencingを進めていく。具体的には、まず単一クローンである細胞株を用いてプローブによるキャプチャー法を用いたtarget capture long read sequencingとその後の専用のソフトウェアを使った解析がワークするかの確認を行い、実際の臨床検体を用いて解析を進めていく。対象症例は、昨年度に行ったshort read sequencingの解析で、従来のIg/TCR遺伝子再構成は検出されないものの、何らかのゲノム異常が示唆された症例を中心に8例ほどを予定している。また、特にIgH領域には個人特有の欠失などが含まれることがR5年度の解析からも懸念されるため、寛解期の検体をコントロールとして用いて解析を行う予定である。 また、昨年度のshort read sequencingの解析により、クローナルなIg/TCR遺伝子再構成が検出されない症例について、臨床情報やRNA sequencing、細胞表面マーカーなどの情報の収集を行う。また、検出された構造異常のMRDとしての有用性などを引き続き検証する。 最終年度においては、short readとlong readのシーケンス結果の統合と必要な多検体での解析を予定しており、臨床情報も併せてIg/TCR領域におけるゲノム異常について得られた知見をまとめる。
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