研究課題/領域番号 |
22K15587
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
木内 純 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (10847180)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 胃癌 / 大腸癌 / サルコペニア / エクササイズ / リハビリテーション / 消化器癌 / 癌抑制型microRNA / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
近年、消化器癌において骨格筋量の減少(サルコペニア)が不良な長期予後に関連することが報告されている。しかしその背景となる分子メカニズムについては不明な点が多い。本邦や欧米諸国における急速な高齢化により、潜在的なサルコペニア併存担癌患者の割合は増加していると考えられ、これに対するマネジメントの構築は喫緊の課題である。 本研究では血中遊離microRNAに着目し、消化器癌においてサルコペニアの病態を反映し得る癌抑制型microRNAを同定し、これらの機能解析と新規抗がん核酸治療への応用の可能性について、in vitro、in vivoで評価する。
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研究実績の概要 |
骨格筋由来癌抑制型microRNAであるmiR-133bの直接ターゲット分子について、胃癌細胞株と、胃癌手術標本を用いて検討した。その結果、miR-133bの直接ターゲットとして、軟部組織腫瘍における癌遺伝子的機能が報告されているPAX7が同定された。胃癌細胞内においてPAX7の発現を抑制すると、癌細胞の増殖、遊走、浸潤能は抑制された。実際に胃癌切除標本内においてもPAX7の発現と血中miR-133b濃度は逆相関を示し、in vitroの解析では胃癌細胞にmiR-133bを過剰発現させることで、PAX7の発現が抑制されることが分かった。このことは、サルコペニアを有することが、血中miR-133b濃度低下を介して、癌細胞の更なる悪性化を誘導している可能性を示唆している。 また4週間の自発運動後に胃癌細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて、自発運動をさせなかったマウスよりも血中miR-133b濃度が上昇し、移植した腫瘍の増大も抑制されることが確認された。これはエクササイズによる骨格筋量の維持、増大が、血中miR-133b濃度の上昇を介して、抗腫瘍的な作用を示す可能性を示唆するデータであり、実際の担癌患者に対する日常的なエクササイズやリハビリテーションの、腫瘍学的な意味での重要性を期待させる結果である。さらに、担癌マウスにmiR-133bを経皮的に投与したところ、血中miR-133b濃度は上昇し、腫瘍内のmiR-133b濃度も上昇することで腫瘍の増大が抑制された。実際のエクササイズやリハビリテーションとともに、miR-133bの投与自体も新たな治療戦略となりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた①miR-133bの直接ターゲットの同定、②運動モデルマウスを用いたエクササイズによる血中癌抑制型microRNAの発現変化の観察については概ね終了した。しかしながら、サルコペニア併存担癌患者の不良な予後に関連しうる、miR-133b以外のmicroRNAの同定については、現在NCBIのデータベースを用いて絞り込みを行っている段階である。これらの絞り込みが終了次第、それらの分子の生体内での機能について解析を進める予定である。 運動マウスモデルを用いた実験において、運動により血中miR-133b濃度が上昇することが分かった。このことから、実際のヒト担癌患者におけるエクササイズの有用性を、血中miR-133b濃度の変化に着目して観察する前向き試験を計画し、現在症例を集積している。
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今後の研究の推進方策 |
miR-133b以外にもサルコペニアを反映し得る分子は存在していると思われる。そのような分子をNCBIのデータベースを用いて絞り込み、またmicroRNAアレイを用いて抽出する。その後、それらの分子の生体内での機能を確認し、特に骨格筋と癌細胞との相互作用について共培養系を用いて解析する。
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