研究課題/領域番号 |
22K15594
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
高島 大輝 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (10785588)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 放射免疫療法 / アスタチン-211 / 放射線分解 / 能動的標的化 / リンカー技術 / 抗体工学 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞死を効率的に誘導可能である一方、組織内飛程距離は短く、細胞数個程度であるアルファ線を用いて、有効で安全ながん治療を行うためには、核種を腫瘍に集積させつつ、正常臓器への分布を厳格に軽減する必要がある。 がんに発現する標的分子を認識する抗体にアルファ線放出核種を結合させ、腫瘍に送達する放射免疫療法は、有望な戦略の一つと考える。 本研究では、リンカー技術と抗体工学を駆使して、プロトタイプの標識抗体と比較し、アルファ線放出核種アスタチン-211をより腫瘍選択的に集積可能な送達システムを構築し、薬効の増強と毒性の軽減を図る。
|
研究実績の概要 |
アスタチン-211標識後、溶液中に生じる活性酸素種によって標識抗体が放射線分解を受けると、特異的結合能が障害され、薬効が減弱することをこれまでに明らかにしてきた。 本研究では、放射線分解が標識抗体の薬物動態に及ぼす影響を検証すべく、放射線分解されたアスタチン-211標識抗体とラジカルスカベンジャーであるアスコルビン酸ナトリウムを添加して、活性酸素種を消去し、保護した標識抗体を、担癌マウスにそれぞれ投与し、腫瘍集積と正常臓器への分布を評価した。その結果、両者の血中滞留性と正常臓器への分布は同等である一方で、放射線分解を受けた標識抗体の腫瘍集積は、保護した標識抗体と比較し、有意に低下することが分かった。放射線分解は、抗原抗体反応を介した能動的標的化を障害する一方で、enhanced permeability and retention effect(EPR効果)を介した受動的標的化には影響しないことを示唆する結果である。また、腫瘍細胞に結合する抗体と結合しないコントロール抗体にアスタチン-211を標識し、アスコルビン酸ナトリウムを添加して放射線分解から保護した上で、担癌マウスに投与し、体内動態を評価した。腫瘍細胞に結合する標識抗体を投与した場合は、腫瘍におけるpercent injected dose/g(%ID/g)は、血液におけるそれを上回ったが、アスタチン-211標識コントロール抗体を投与した場合は、腫瘍の%ID/gは、血液のそれを下回った。アスタチン-211の腫瘍送達においては、能動的標的化が特に重要である。 アスタチン-211の正常臓器への分布をより厳格に低く抑えるべく、複数の標識用試薬を準備し、これらをそれぞれ抗体に付加した複合体を作製の上、アスタチン-211を標識し、担癌マウスにおける体内動態の差異を検証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線分解がアスタチン-211標識抗体の薬物動態に及ぼす影響を明らかにし、この結果を論文化した。また、放射線分解からアスタチン-211標識抗体を保護し、腫瘍集積性を維持するために必要かつ十分な保存条件を検討し、これを決定した。 アスタチン-211標識に用いる至適なリンカー構造を明らかにすべく、複数のリンカー化合物を準備し、これらを抗体にそれぞれ付加した複合体を作製した。本研究では、これまでに報告のないリンカー化合物も用いているが、既報の標識用試薬と比較して遜色のない比放射能で、アスタチン-211の標識が可能であった。保存溶液中におけるアスタチン-211の抗体からの遊離を評価し、リンカー構造によって遊離の程度が異なることを確認した。また、担癌マウスに対してアスタチン-211標識抗体を投与し、リンカー構造の違いによってもたらされる薬物動態の差異を検証した。 抗体工学の手法を用いて抗体の生体内における腫瘍特異性を向上させることが本研究の目的の一つである。研究計画に準じて、複数の改変抗体を作製した。
|
今後の研究の推進方策 |
異なるリンカーを介してアスタチン-211を標識した抗体の体内動態に関するデータを蓄積し、リンカー構造がアスタチン-211標識抗体の薬物動態に及ぼす影響を明らかにしていく。 2022年度に作製した複数の改変抗体に対して放射性同位元素を標識し、担癌マウスにおけるこれらの腫瘍集積や臓器分布等の体内動態の差異を評価する。加えて、この薬物動態の差異が、アスタチン-211を標識した場合の毒性などにどのように反映されるのかという点を検証していく。
|