研究課題/領域番号 |
22K15601
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
若松 学 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00908882)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | 網羅的プロテオーム解析 / 遺伝性骨髄不全症候群 / SDS / プロテオミクス解析 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝性骨髄不全症候群(Inherited Bone Marrow Failure Syndrome; IBMFS)は、貧血、血小板減少、顆粒球減少などの造血不全を合併する症候群である。多数の疾患を包括する概念であり、ファンコニ貧血、先天性角化不全症、シュワッハマン・ダイアモンド症候群などが含まれる。IBMFSには、遺伝子解析のみで診断が確定できない場合も多く、遺伝子解析を補完する技術として高深度プロテオーム解析を用いた、迅速かつ低コストの検査診断システムの構築を行う。
|
研究実績の概要 |
遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は、先天的な遺伝子変異が原因で造血不全を呈する症候群であり、様々な疾患を包括する。IBMFSの一病型であるシュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)は、乳幼児期より膵外分泌異常、血球減少、骨格異常を特徴として発症し、一部の症例が骨髄異形成症候群(MDS)、および急性骨髄性白血病(AML)へ進展する。MDS/AMLを発症した症例の予後は極めて不良であり、他のIBMFSとの鑑別が必要不可欠である。SDSの原因遺伝子として約90%の症例でSBDS遺伝子変異を認めるが、SBDS遺伝子には非常に相同性が高い偽遺伝子(SBDSP1)が存在し、通常の次世代シーケンサーによる遺伝子解析では十分な感度で変異を同定することが難しく、見逃される症例が存在する。このような背景から遺伝子解析以外の臨床検査技術による迅速かつ簡便な診断検査の構築が望まれている。本研究では、最新鋭の高深度網羅的プロテオーム解析をIBMFS症例(n = 60)に対して実施した。結果として、従来型のプロテオーム解析では同定することが難しいキナーゼ、転写因子、リン酸化タンパク質などの微量タンパク質を含む、約8,000種類のタンパク質の同定・定量を行うことが可能であった。各々のIBMFS疾患の中で、有意に発現増加、もしくは減少するマーカータンパク質を抽出し、網羅的遺伝子解析の結果と比較した。プロテオーム解析解析を用いることで、マッピングエラーのために遺伝学的解析のみでは、確定診断することが難しい症例を同定することが可能であった。プロテオーム解析による網羅的タンパク質定量は、これまでの遺伝子解析を補完する解析技術として、迅速で低コストな診断システムとなりえると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、網羅的遺伝子解析の結果に基づき診断した、様々なIBMFS患者(n = 60)を対象に高深度プロテオーム解析を実施した。最新の網羅的プロテオーム解析技術を用いて、偽陽性率(FDR)<0.05の約8,000種類のタンパク質の定性・定量を行った。結果として、従来型プロテオーム解析技術で定量困難であったキナーゼ、転写因子、リン酸化タンパク質などの微量タンパク質を定量することが可能であった。同定したタンパク質をもとに、疾患群ごとに有意な発現増加、もしくは減少を認めるタンパク質抽出を行った。結果として、SBDSタンパク質発現が有意に低下した6例中4例が遺伝子解析結果と一致したが、残り2例はショートリードの網羅的遺伝学的解析のみでは変異を同定することが困難な症例であった。遺伝学的解析のみでは診断が難しい症例をプロテオーム解析でスクリーニングすることのできる網羅的スクリーニングシステムの構築を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
IBMFS患者の一部に、乳幼児期に典型的な身体的特徴を認めないために、成人期まで未診断のまま見逃される症例が存在する。既報では、18~40歳のMDS患者のうち約4%がSDSを背景疾患に有しており、成人期MDSを発症するまでSDSと診断されたことがなかったとされる。この結果は、成人期発症のMDS/AML患者における背景疾患の検索としてSDSのスクリーニング評価が必要であることを示唆している。今後、本研究では、検証コホートを用いて、プロテオーム解析がSDSにおける迅速診断系として十分に有用であるか評価する。SDS患者のスクリーニング検査へと応用することができれば、遺伝子解析で診断確定が不十分な疾患に対する新たな診断ツールとなると考えられる。高深度網羅的プロテオーム解析の結果をもとにして、他のIBMFS疾患へ応用し、遺伝子解析を補完するタンパク質定量による簡便な「IBMFSに対する迅速検査診断システム」を構築する。また、診断システムの構築とともに同定した、マーカータンパク質に対する特異的な新規治療薬の創薬開発を行う予定である。
|