研究課題/領域番号 |
22K15615
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
名島 悠峰 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 血液内科, 医長 (80750471)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 同種造血幹細胞移植 / HLA半合致移植 / 移植片対白血病効果 / 微小残存病変 / 急性骨髄性白血病 / 急性リンパ性白血病 / コピー数中立LOH / GVL効果 / 白血病 / 免疫エスケープ |
研究開始時の研究の概要 |
近年急速にHLA半合致移植(ハプロ移植)が普及し、100%ハプロドナー候補となる親子間の移植なども可能となり、根治療法である同種移植を実施可能な難治性造血器腫瘍の症例数は増加した。しかし、難治性であるがゆえに移植後再発に至る症例も多く、最大の障壁となっている。実臨床では、複数のハプロ移植ドナー選択肢があり、再移植により長期生存を得る症例も存在する。本研究ではHLA遺伝子欠失などのハプロ移植後の機序を症例ごとに明らかにし、その情報を速やかに臨床医に返却して再移植の選択肢に生かす、というシステムの構築を目指している。極めて予後不良である移植後再発に対する打開策となり得る。
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研究実績の概要 |
造血器腫瘍の移植医療、特にハプロ移植においては、いかにGVHDを抑えるかに加え、いかにGVL効果を最大化するかが、臨床上の「課題」であり「重要な挑戦」である。本研究では、HLA遺伝子の解析を通じ、ドナー選定に活用できるGVL効果の予測法を開発し、さらにその結果を速やかに臨床医へ返却するシステムを構築することを目的とする。本年度の当初計画は、コピー数測定用のマイクロアレイ(array CGH)をカスタム設計し、これを用いて、実際の患者検体を用いてHLA遺伝子座の存在する6番染色体短腕の染色体構造異常(コピー数異常と後天性UPD/コピーニュートラルLOH)の検出を実現することであった。6番染色体短腕のHLA領域5Mbpについて、カスタム設計の比較ゲノムハイブリダーゼーションアレイ(array CGH; aCGH)をカスタム設計した。このアレイでは、HLA領域に関し市販アレイの5~10倍のプローブを設定した。Agilent社aCGHではSNPプローブもスポットでき、aCGHとSNP解析を同時に実施可能である(aCGH/SNP)。ハプロ移植後の再発症例毎に診断時・移植後再発時の骨髄穿刺吸引試料ペア(n=24、検体数48)からそれぞれ核酸を抽出し、移植前後のaCGHペアデータ解析を実施し、アレイデータは概ね良好に取得された。得られたデータ解析から、一部の症例でコピー数異常、後天性UPD/コピーニュートラルLOHに一致する検体が見出された。また、研究課題の遂行において各症例の臨床経過や微小残存病変の推移を解析する過程で得られた知見も加味し、同種移植後のGVL効果、微小残存病変の推移と移植後維持療法に関する総説論文を執筆し、International Journal of Hematology誌にpublishされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6番染色体短腕のHLA領域5Mbpとその他の染色体領域について、比較ゲノムハイブリダーゼーションアレイ(array CGH; aCGH)をカスタム設計した。カスタム設計したHLA領域では市販アレイの5~10倍のプローブを設定した。Agilent社aCGHではSNPプローブもスポットでき、コピー数変化とSNP解析を同時に実施可能である(aCGH/SNP)。これを用いて、実際の患者検体を用いてHLA遺伝子座の存在する6番染色体短腕の染色体構造異常(コピー数異常と後天性UPD/コピーニュートラルLOH)の検出が実現された。このアレイでは、ハプロ移植後の再発症例毎に診断時・移植後再発時の骨髄穿刺吸引試料ペア(n=24、検体数48)からそれぞれ核酸を抽出し、移植前後のaCGHペアデータ解析を実施し、アレイデータは概ね良好に取得された。得られたデータ解析から、一部の症例でコピー数異常、コピーニュートラルLOHに一致する検体が見出された。これらの一部について、全エクソン解析によって検証を試み、当該領域のコピー数異常とアレル頻度の不均衡が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、今後HLA領域のターゲットシークエンス解析、RNA発現解析を計画しているが、遺伝学的免疫逃避の判断のための実臨床でのHLA-loss遺伝子検査の実現を検討するなかで幾つかの問題点も明らかとなった。①体細胞変異の検出の場合は、院内の小型NGS機器と専門家によって標的領域のNGS解析が可能となっている。しかし、HLA-loss検査のための移植後再発症例の検体では、患者とドナー由来の4種類の胚細胞系列の混在する検体からHLAアリルの区別を行う必要があるため、検体性状による技術的ハードルが高いこと、②HLA-lossを含む染色体コピー数異常を判定するための技術としては、全エクソン解析や全ゲノム解析があるが、大型NGS機器は院内になく、外部委託解析やマイクロアレイ解析の場合では1-2ヶ月の時間がかかること、③コピーニュートラルLOHの判定のためにはコピー数の正確な推定が必要だが、腫瘍細胞含有率が低い検体の場合にはいずれの解析手法でも一般にその精度は低くなってしまうこと、などである。そのため、今後はHLA領域のターゲットシークエンス解析を主軸に置く計画としつつ、HLA遺伝子解析のためのバイオインフォマティクス解析手法の開発や他研究者の研究進展にも配意し、実現性を判断しながら進めてゆく。また、HLA-lossを検査すべき臨床検体は一般に長期の臨床経過を経ており、骨髄穿刺吸引検査を実施した残余試料として当科で保存されている。しかし、検体により検体残余量と腫瘍細胞含有率の多寡があることから、症例によっては診断時と再発時の最適な検体が得られない場合もあることが課題として浮上している。また、ペア解析を行う場合の検体の抽出(治療歴と骨髄穿刺吸引検査実施タイミングの情報紐付け等)についても、臨床業務のなかで負担の大きい作業となりがちであるため、データベースの改良が必要である。
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