研究課題/領域番号 |
22K15619
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松山 裕典 名古屋大学, 理学研究科, 特任助教 (50796464)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 神経科学 / 動物行動 / 行動のばらつき / 知覚のゆらぎ / 線虫 C. elegans / オプトジェネティクス / システム生物学 / ばらつき / 機械学習 / 知覚 / 神経回路 / 光遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
脳は、感覚刺激を知覚や行動に変換するマシンと見なせるが、その入出力の関係は必ずしも決定論的ではない。動物は、外部から単一のインプットが与えられた場合でも、しばしば複数の異なるアウトプットを示す。こうした「応答のばらつき」やその背後にある「知覚のゆらぎ」は、脳を特徴づけるユニークな情報処理の様式であるが、そのメカニズムは解明されていない。本研究では、線虫C. elegansをモデルとして、1種類の感覚ニューロンを選択的に刺激した際の行動を測定し、行動時系列パターンとばらつきを数理的に解析する。さらに、下流のニューロンを個別に除去した個体を用いて、行動のばらつきに関与する神経回路を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、「動物行動のばらつき」と「知覚のゆらぎ」の神経メカニズムを明らかにすることを目的としている。特に、線虫C. elegansにおいて、単一の感覚入力が複数の異なる応答行動に変換される現象を通して、知覚のゆらぎの背後にある神経メカニズムの解明を目指している。温度感覚ニューロンAFDに特異的に青色光駆動型カチオンチャネル(CoChR)を発現させた系統を用いて、青色光の照射によってAFDを選択的に活性化させた時に引き起こされる行動パターンを計測するため、多個体の線虫の行動をハイスループットに計測するシステムの開発を前年度から引き続き行い、稼働させることができた。現在、この行動計測システムを用いて、線虫の姿勢変化と移動を含む行動時系列データを取得している。また、得られた行動時系列を数理的に解析するためのプログラムの作成を行なっている。 感覚ニューロンAFDの活性化に起因する神経ダイナミクスが下流の神経回路にどのように伝搬しているかを明らかにするため、AFDの活性を光で操作しながら下流の介在ニューロンおよび運動ニューロンの応答をカルシウムイメージングで計測する実験をデザインし、この実験に用いるトランスジェニック系統の作出を進めている。 さらに本年度は、線虫の温度走性行動における行動のばらつきの解析を行なった。線虫は摂食経験と温度を連合させて学習し、温度勾配上で飼育温度帯に沿って前進行動(Isothermal tracking)を示すことが知られている。このIsothermal trackingの維持と中断のメカニズムを明らかにするために、行動要素の時系列分析を行なった。その結果、Isothermal trackingを中断させる要因となる行動要素にばらつきがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、オプトジェネティクスを用いて特定のニューロンの活性を操作しながら多個体の線虫の姿勢変動と行動履歴を計測するためのシステムを稼働させた。このアッセイ・プラットフォームによって、複数個体の行動追跡と時系列データの取得が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度までに開発・稼働させた行動計測システムを用いて行動データの取得を引き続き進める。線虫の姿勢変動および移動の履歴を数理的に定量化し、行動のばらつき、およびその統計的性質を明らかにする。細胞死を誘導するカスパーゼを用いてシングルセルレベルでのアブレーション実験を行い、ばらつく行動パターンの生成に関与するニューロンを明らかにする。また、下流のニューロンの神経ダイナミクスを計測するためのトランスジェニック系統の作出を進め、オプトジェネティクスとカルシウムイメージングを組み合わせて神経ダイナミクスの計測を行う。これにより、温度感覚ニューロンAFDの活性化を起点とする感覚情報がどのように下流のニューロン群に伝搬するかを明らかにする。最終的には行動のばらつきをもたらす神経ダイナミクスを明らかにし、そのダイナミクスを数理モデルで表現することを目指す。
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