研究課題/領域番号 |
22K15638
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀金 慎一郎 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (60775906)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 神経発達障害 / 神経回路病態 / Timothy症候群 / カルシウムシグナリング / 病態モデルマウス / L型カルシウムチャネル / 自閉スペクトラム症 / 神経回路形成 / カルシウムシグナリング破綻 |
研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)は、社会性の障害や固執的な反復行動を主な特徴とし、胎生・発達期にかけての「神経回路の形成障害」が、発症要因として注目を集める。しかしその一方で、こうした回路形成障害の実態やASDとの因果関係については多くが未解明であり、病態理解を基礎とした合理的な治療法の開発が困難な状況にある。 我々はこれまでに、ASD患者から同定された、変異型のL型カルシウムチャネルを発現するマウス系統を作出し、同マウスにおけるASD様行動と抑制性神経回路の形成障害を見出した。本研究では、こうした抑制性回路の形成障害とASD様行動との因果関係を明らかにし、破綻した抑制性回路を標的とした実験的治療を行う。
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研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)は、生後初期から認められる社会性の障害や固執的な反復行動を主な特徴とし、胎生・発達期にかけての「神経回路の形成障害」が、発症要因として注目を集める。しかしその一方で、こうした回路形成障害の実態やASDとの因果関係については多くが未解明であり、病態理解を基礎とした合理的な治療法の開発が困難な状況にある。重要なことに、ASDを伴うTimothy症候群の患者では、L型カルシウムチャネルの1アミノ酸変異(G406R、カルシウム流入を過剰に増大)が同定されている。そのため我々は、Timothy症候群モデルマウスの作製と解析を行い、ASD様の行動異常や、抑制性神経回路の形成障害を見出した。 本研究では、こうした神経回路形成障害とASD様行動との因果関係を明らかにし、破綻した神経回路を標的とした実験的治療を行う。初年度においては、抑制性神経細胞選択的に、G406R変異型L型カルシウムチャネルを発現させ、マウス行動の評価を行った。その結果、興味深いことに、興奮性・抑制性神経細胞に同変異型チャネルを発現させた際に観察された、顕著なASD様の行動異常が観察されなかった。当研究成果は、興奮性神経細胞におけるG406R変異型L型カルシウムチャネルの発現が、ASD様の行動異常の原因となることを強く示唆するものである。またさらに、計画していた治療的介入の予備的検討に着手し、ウイルスベクターを用いた同変異型チャネルのノックアウトを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の到達目標であった、独自に作出したASD病態モデルマウスに対する、一連の行動学的評価を完了した。この病態モデルマウスでは、抑制性神経細胞選択的に、ASD患者に由来する変異型L型カルシウムチャネルを発現させている。その結果、ASDの中核症状である、社会性の障害や固執的な反復行動を示す、行動異常は認められなかった。こうした研究成果は、抑制性神経細胞以外の細胞種における、変異型L型カルシウムチャネル発現が、ASD発症の原因となることを強く示唆するものである。 またさらに、来年度以降に計画していた、治療的介入法の開発に着手している。この治療的介入では、FLP-FRTシステムを利用した遺伝子組換えを行うため、FLP組換え酵素を発現するウイルスベクターを作出した。またさらに、FLPによる遺伝子組み換えを評価可能なレポーターマウス系統を入手し用いることで、ウイルスベクターによる、遺伝子組換えの成功を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
興味深いことに、抑制性神経細胞選択的に、G406R変異型L型カルシウムチャネルを発現させたところ、興奮性・抑制性神経細胞に同変異チャネルを発現させた際に観察された、顕著なASD様の行動異常が観察されなかった。こうした研究成果は、興奮性神経細胞におけるG406R変異型L型カルシウムチャネルの発現が、ASD様の行動異常の原因となることを示唆するものである。そのため今後の研究の推進方策として、興奮性神経選択的に同変異チャネルを発現させ、行動表現型について評価する。なお興奮性神経細胞選択的な同変異チャネル発現に用いるCaMKII-creマウス系統は、今年度にすでに導入している。こうした検討により、ASD様の行動表現型が得られた際には、計画していた、神経回路形成の破綻と神経活動異常の評価を実施する。また更に、同病態モデルマウスに対し、治療的介入を実施し、各種表現型の回復を検討する。
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