研究課題/領域番号 |
22K15690
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦詞 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00750580)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 甲状腺オルガノイド / SLC26A7遺伝子 / iPS細胞 / SLC26A7 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はSLC26A7が甲状腺濾胞細胞管腔側でヨードの輸送に関与し、先天性甲状腺機能低下症(CH)の新規原因遺伝子であることを世界に先駆けて報告した。しかし、その生体内での詳細な機能は未だ解明されていない。本研究は、ミニ臓器である甲状腺オルガノイドを用いてSLC26A7遺伝子異常によるCHの病態を解明すると同時に甲状腺におけるヨード輸送機構の全容解明を試みる研究である。さらに我々はマウスの甲状腺オルガノイドを作成してその治療効果を検討し、根治的治療法への応用を目指している。これが実現すればCHにおいて患者自身の細胞を利用した全く新しい治療法の開発に繋がる可能性を秘めている。
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研究実績の概要 |
先天性甲状腺機能低下症の病態解明を目的として、甲状腺オルガノイドを用いた機能解析系の確立とその治療応用に対する研究課題であるが、甲状腺オルガノイドについては免疫染色でPax8、Tgといった遺伝子の発現を認め、甲状腺濾胞細胞と類似したキャラクタリゼーションを確認した。さらにZO1による免疫染色で極性の評価を実施したところ、甲状腺オルガノイドにおける内腔がいわゆる濾胞に相当することを確認し、解剖学的にも生体内における甲状腺の特性を十分保有しているモデルを確立することができた。試験管内で甲状腺に類似したモデルを精度高く樹立可能であることは、生体内に近い条件での機能評価に大きく貢献するものと考えている。 また、Slc26a4、Slc26a7ノックアウト(KO)マウスからも同様の手法で甲状腺オルガノイドを作成することができた。先天性甲状腺機能低下症のモデルマウスから甲状腺オルガノイド作成をした報告は本研究が初めてであり、甲状腺疾患の病態解明に結びつく重要なステップであると考える。しかしながら、甲状腺オルガノイドをマウスの腎皮膜下に野生型マウスから作成した甲状腺オルガノイドを移植し、マウスの甲状腺機能の変化、腎皮膜下での甲状腺オルガノイドの組織学的な機能評価を実施したが、手技的な問題もあり十分な評価はできなかった。 マウス甲状腺から甲状腺オルガノイドを作成し、レンチウイルスベクターを用いてVenusを発現させたところ問題なく遺伝子導入が可能であることが確認できた。次にSlc26a7とVenusが共発現をするベクターを構築し、その遺伝子発現効率を評価したが、十分な導入効率は得られていない。ヒトでの遺伝子治療を想定したiPS細胞を使用した実験には着手できていないが、既報の論文に従って今後構築を計画したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in vitroでオルガノイドの機能評価を行うために、甲状腺組織と類似した成熟した濾胞構造を再現する必要性があるが、遺伝子発現については概ね甲状腺組織と類似した発現を示しているものの、前年と同様に機能的な評価として、T3及びT4といった甲状腺ホルモンの産生の確認ができていない。 また、レンチウイルスによるオルガノイドへの遺伝子導入について、Venusの導入は問題なく可能である一方で、まだSlc26a7といった目的の遺伝子導入効率が十分ではないことで、その後の実験計画にも影響を及ぼしている。また実験に携わる研究者の確保が難しく実験の進行が依然として滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子導入効率の向上のために、ウイルス濃度の確保のためによりパッケージングに必要な細胞量を増やすことが重要と考えている。また機能的解析系の確立を目指して、より高精度の甲状腺ホルモン測定系の導入を行い、すでに実用化している。これによって、解析に対する精度の向上とともに必要検体量の削減などコストパフォーマンスの改善も期待できる。また人的問題に関しても、新たな研究員の着任に伴い調整を進めている状況である。
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