研究課題/領域番号 |
22K15695
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
奥茂 敬恭 昭和大学, 医学部, 講師 (40845773)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 防已黄耆湯 / 変形性膝関節症 / 滑膜細胞 / ペリオスチン / STAT6 / 疼痛 / 東洋医学 / 漢方薬 |
研究開始時の研究の概要 |
変形性膝関節症に伴う腫れや痛みに対して防已黄耆湯という漢方薬が有効とされるが、作用機序が不明確なため汎用されるには至っていない。我々はラット変形性膝関節症モデルを用いた先行研究を行い、防已黄耆湯が関節軟骨の退行性変化を抑制し、痛覚伝達に関わる脊髄神経の興奮を抑制することを見出した。本研究では防已黄耆湯が如何にして関節軟骨の病態を改善するのか、単離軟骨細胞を用いて分子メカニズムを解明する。さらに、上記ラットモデルにて痛覚伝達に関わる各種受容体とその伝達経路を同定し、鎮痛作用の本質に迫る。本研究によって、変形性膝関節症の進行を抑制するという、西洋医学だけでは実現不可能であった治療法の開拓を目指す。
|
研究実績の概要 |
今年度は変形性膝関節症に関与する滑膜炎に対する防已黄耆湯(Boiogito: BOT)の作用を検討した。変形性膝関節症ラットモデルに対する腰髄内カテーテル留置の手技確立に時間を要しており、下行性疼痛抑制系やオピオイド鎮痛系に関与する神経伝達物質のアンタゴニストを経脊髄投与する実験を引き続き行う。軟骨細胞を単離培養して細胞活性を比較していく実験を行っていく前に、ヒト線維芽細胞様滑膜細胞(Human Fibroblast-like Synoviocyte: hFLS)を入手して、培養条件下でのBOTの作用に関する実験を行った。変形性関節症の発症や進行に関与する因子としてペリオスチンというタンパクの存在が指摘されており、本研究ではhFLSからペリオスチンが産生されるための炎症性サイトカインの選定や投与プロトコルを行うことから開始した。ペリオスチン産生量の測定は培地中の濃度をELISAで測定した。 hFLSに対してIL-1 betaを投与してもペリオスチン産生は増加しなかったのに対して、IL-13を投与した際に有意に産生量が増加したことから、IL-13に着目して実験を行った。容量依存性、時間依存性の検討を行った結果、hFLSに対して20 ng/mLのIL-13を72時間投与することによって有意にペリオスチン産生が増加した。このプロトコルに沿って、BOTを2時間前に投与した場合のの変化を検討した。BOTを100 μg/mL、500 μg/mL、1000 μg/mLで投与し、1000 μg/mLで投与した際に有意にペリオスチン産生を抑制した。 IL-13による刺激からペリオスチン産生に至る細胞内シグナル伝達経路として、転写因子であるSTAT6がリン酸化される。BOTの前投与によって、STAT6のリン酸化が抑制されていることをウェスタンブロッティングで確認した。これらの結果により、IL-13に刺激されたhFLSに対するBOTの投与は細胞内シグナル伝達経路を阻害することによって、ペリオスチン産生を抑制することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はBOTによる滑膜炎抑制作用の機序を明らかにした。 変形性膝関節症ラットモデルに対するBOTの鎮痛機序解明や軟骨細胞の活動性の変化については、引き続き実験を行っていく。腰髄内カテーテル留置の手技確立に時間を要しており、下行性疼痛抑制系やオピオイド鎮痛系に関与する神経伝達物質のアンタゴニストを経脊髄投与する実験を引き続き行うため、実験の進捗状況としてはやや遅れている、とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は変形性関節症ラットモデルの腰髄内にカテーテル留置を行い、下行性疼痛抑制系やオピオイド鎮痛系に関与する神経伝達物質のアンタゴニストを経脊髄投与しながらBOTを内服させる実験を継続実施する。併せて、膝軟骨細胞を単離してその細胞増殖能や軟骨基質分解酵素の産生量などを測定する実験を継続する。
|