研究課題/領域番号 |
22K15702
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 靖章 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (70897735)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / リン酸化 / NEK1 / RNA結合タンパク質 / シグナル伝達経路 / ALS / 翻訳後修飾 |
研究開始時の研究の概要 |
翻訳後修飾の異常はALSの主要な病態のひとつである。申請者は、ALS関連遺伝子NEK1の翻訳産物が別のALS関連遺伝子のタンパク質であるC21ORF2のリン酸化を介して発現量を自己調節していることなどを報告したが、NEK1は他にも多様な基質タンパク質を持ち、様々なシグナル経路を介してALS病態に関与することが想定される。本研究ではNEK1の酵素活性を制御する機構を明らかにし、基質タンパク質のリン酸化の病的意義を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、孤発性を含む筋萎縮性側索硬化症 (ALS) のリスク遺伝子であるNever in mitosis gene A-related Kinase 1 (NEK1) の翻訳産物であるセリン・スレオニンキナーゼNEK1に着目し、リン酸化の標的となる基質タンパク質を同定した上で、運動ニューロン死というALSの根本的病態に至るカスケードの一旦を解明することを目的としている。 今年度は、野生型・変異型NEK1の活性を評価するためのin vitroアッセイの確立と、NEK1欠損/過剰発現SH-SY5Y細胞をサンプルとしてNEK1のリン酸化基質をプロテオミクス技術により探索することを予定していたが、後述の理由により、完了には至っていない。このため、予備的検討において見出されたNEK1の基質タンパク質について、リン酸化の病的意義の解析をすすめる方針に切り替えた。具体的には、ALSの運動ニューロン病理におけるTDP-43の核外移行・凝集体形成などからRNA代謝障害はALSの主要病態と想定されているが、申請者はALS患者で遺伝子変異が報告されている複数のRNA結合タンパク質のリン酸化を検討し、その中にNEK1によってリン酸化されるタンパク質Xがあることを見出した。そのタンパク質Xについて、NEK1によるリン酸化の標的となるコンセンサス配列を含む部位に着目して、リン酸化部位の同定を試みている。また、CRISPR/Cas9を用いてXの遺伝子にALS関連変異をノックインしたSH-SY5Y細胞の作出を行い、NEK1によるリン酸化の程度の違いとその生物学的意義について解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者はNEK1のリン酸化活性を評価するアッセイ系の確立を試みたが、NEK1は1000アミノ酸を超えるやや大きなサイズであるため大腸菌からのリコンビナントタンパク質の精製は難しく、in vitroの評価系は構築できていない。また、当初はNEK1欠損あるいは過剰発現SH-SY5Y細胞を作出した上でプロテオミクス解析による網羅的な基質スクリーニングを予定していたが、クローニングの過程で細胞死に至ってしまい、NEK1欠損細胞の作出には至っていない。このため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
近年、リン酸化はTDP-43をはじめとするRNA結合タンパク質の液-液相分離 (Liquid-Liquid Phase Separation: LLPS)に影響を与え、その機能や易凝集性に影響を与えるという有力な研究結果が複数報告されている。今後は予備的検討で見出したRNA結合タンパク質Xに着目し、NEK1によるリン酸化部位の同定をおこなう。NEK1によるリン酸化が、Xの持つRNA代謝能とLLPSに基づく易凝集性をどのように変容させるかをRNAシークエンスやFRAP (fluorescence recovery after photobleaching)などの各種解析手法を用いて明らかにし、iPS細胞由来運動ニューロンを用いた表現型解析につなげたいと考えている。
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