研究課題
若手研究
我が国では、急速な高齢化の進展とともに認知症患者が急増している。認知症の50~70%を占めるアルツハイマー型認知症では、認知機能が低下する20~30年前より脳内に原因タンパクが蓄積し病理学的変化が出現し始めると言われている。一方、認知機能と病理学的変化は必ずしも一致しないことが知られており、病理学的変化を有しながらも認知機能が維持される機構は認知予備能と呼ばれている。本研究では、従来法と比較し侵襲性の低い血液を用いた検査でアルツハイマー型認知症の病理学的変化を調べ、認知予備能に関連する脳の構造や脳内ネットワーク等の神経基盤の解明を目指す研究である。
本研究は、健常高齢者を対象として、アルツハイマー型認知症の血液バイオマーカーの測定と安静時機能的MRI(rsfMRI)解析により、認知機能の維持に関連する画像特徴を見いだすことを目的として実施した。バイオマーカーは免疫沈降-質量分析(IP-MS)法を用いて測定した血液中のAβ関連ペプチドの比より算出したComposite biomarker (CB)と、Quanterix社のSimoaを用いて測定したp-tau181を検討に用いた。認知機能が正常かつCBが正常であった群を健常コントロール(NC)群、認知機能は正常だがCBが上昇していた群を認知予備能(CR)群と分類した。最終年度はrsfMRI画像を用いて両群におけるネットワーク特徴の違いとバイオマーカー値や認知機能スコアと相関を示すネットワーク変化について比較検討した。Seed解析では、CR群において後部帯状回とsalience networkを構成する前部帯状皮質や島皮質との結合の増強をはじめ、ネットワーク変化は結合の増強が主体であった。CBとの相関も同様の傾向で、default mode network とsalience networkのネットワーク間結合の増強や情報処理関連ネットワーク内の結合の増強が示唆され、これらのネットワーク変化は認知機能スコアと負の相関を示した。一方、p-tau181との相関を示したネットワーク変化は結合の減弱が主体であった。これらの結果はCR群における認知機能維持に関連する代償的ネットワーク変化である可能性が示唆されるが、CBとp-tau181において相関するネットワーク変化に違いがみられる点ついては、さらなる検討が必要と考えている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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