研究課題/領域番号 |
22K15746
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
坪本 真 金沢大学, 附属病院, 助教 (40835906)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | GABAA receptor / GABARAP / GPHN / ARHGEF9 / SHISA7 / 死後脳 / real-time PCR / GABAA受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
統合失調症患者で機能低下が報告されている作業記憶は、複数の大脳皮質領域から成る神経ネットワークにより担われる。そして、ネットワークにおける情報処理の効率化には、各領域に存在する抑制性の介在ニューロンによるGABA神経伝達が中心的な役割を担っている。本研究では、統合失調症の作業記憶ネットワークにおけるGABA神経伝達変化のシナプス後部分子メカニズムの解明を目指し、精神神経疾患歴のない対照例および統合失調症患者の死後脳を用い、GABAA受容体のサブユニットおよび受容体のシナプス後膜における発現を制御する足場タンパク質のmRNA発現を解析する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、統合失調症で低下が多く報告されている視覚作業記憶の神経ネットワークを構成する背外側前頭前野(DLPFC)と後部頭頂野(PPC)において、GABA受容体足場タンパク質をコードするGABARAP、GPHN、ARHGEF9、SHISA7の発現を定量した。定量には統合失調症患者と対照者のペア20組からの死後脳を用い、それぞれの死後脳のDLPFCおよびPPCの灰白質から抽出したRNAを用いた。各症例から得られたRNAサンプルを用いてGABARAP、GPHN、ARHGEF9およびSHISA7のmRNAの発現を定量した結果、DLPFCにおいてGABARAPは3.5%増加、GPHNは発現量に変化なし、ARHGEF9は0.7%増加、SHISA7は12.3%増加、PPCにおいてGABARAPは2.8%増加、GPHNは3.9%減少、ARHGEF9は0.4%増加、SHISA7は22.3%増加していることが判明した。疾患、性別を固定効果、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RNA integrity number(RIN)を共変量とした共分散分析の結果、DLPFCにおける各遺伝子発現への疾患の影響は4つの足場タンパク質すべてで有意性は検出されなかった。PPCにおける各遺伝子発現への疾患の影響はSHISA7のみで有意であった。またDLPFCでの共分散分析における性別、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RINの有意な影響はGABARAP、ARHGEF9、SHISA7では認められなかった。GPHNでは年齢およびRINによる有意な影響を認めた。PPCでは上記共変量の有意な影響を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、視覚作業記憶ネットワークを構成する大脳皮質4領域におけるGABRA1、GABRA2、GABRA5、GABRB2、GABRG2、GABRD、GABARAP、 GPHN、ARHGEF9、SHISA7の発現を20組の統合失調症と健常対照者のペアにおいて計測することを目的としている。2023年度には、これらの症例の脳サンプルが存在する米国ピッツバーグ大学精神科に出張して一次視覚野(V1)、二次視覚野(V2)からRNA抽出用のサンプルを準備する予定であったが、日程が合わずできなかった。そのためDLPFCおよびPPCのRNAサンプルを用いてGABA受容体足場タンパク質の発現定量のみを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度にはピッツバーグ大学精神科に出張し、一次視覚野(V1)、二次視覚野(V2)の灰白質のRNA抽出用のサンプルを準備し空輸する。同領域における6種のGABA受容体サブユニットとGABA受容体足場タンパク質をコードする4種の遺伝子の発現を定量し、統計的に解析する。
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