研究課題/領域番号 |
22K15764
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
陳 冲 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70783067)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | うつ病 / 運動療法 / ポジティブな記憶想起 / 自然療法 / 情動認知障害 / 意思決定 / 認知柔軟性 / 在宅治療 / 運動 / 自然環境 |
研究開始時の研究の概要 |
うつ病は単に気分的な障害ではなく、認知障害が伴う場合が多い。特に、ネガティブなスキーマによって生じる情動的刺激に対する認知障害は、抑うつ気分の原因であることが提唱されている。既存抗うつ薬治療によってうつ病が寛解しても、情動認知障害が残存し再発の原因や社会回復の妨害となる場合が多い。そのため、うつ病の情動認知障害に有効な治療法の開発が喫緊の課題である。本研究は、抑うつ症状だけではなくうつ病の情動認知障害の改善にも寄与できる運動などの行動介入法を統合した在宅治療プログラムの開発を目的とする。通院治療の付加療法として患者が自主的・継続的に行えることで、質の高い回復と再燃・再発の予防に繋がる。
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研究実績の概要 |
本研究は、通常の通院治療に加え、抑うつ症状だけではなくうつ病における情動認知障害の改善にも寄与できる「運動」、「ポジティブな自伝的記憶の想起」、「自然環境とのふれあい」といった三つの行動介入法を統合した在宅治療プログラムの開発を目的としている。そのため、初年度ではまず各行動介入法の適切なプロトコルを決定するために、それぞれの有効性を独立的に検証する研究を行った。「運動」介入については、日常的な運動の一つである階段登行が気分や認知柔軟性に及ぼす影響を健常者52名を対象に調べた。その結果、エレベーターによる移動と比較して、2階分と5階分の階段登行による気分の変化は認めなかったが、8階分の階段登行による気分の悪化を認めた。一方、2階分の階段登行のみによって認知柔軟性を示す代替用途テストにおける斬新性の向上や問題解決力を示すマッチ棒テストにおける成績の向上が見られた。「ポジティブな自伝的記憶の想起」介入については、健常者38名を対象にポジティブな自伝的記憶の想起が意思決定におけるリスク回避や確率荷重に与える影響を検証した。その結果、中性的記憶想起と比較して、ポジティブな記憶想起が確率荷重を逆S字型へと変化させ、小さい確率をより大きく認知させること(リスク追及)が分かった。うつ病患者では確率荷重がS字型になる傾向を有しており、小さい確率をより小さく認知する傾向(リスク回避)が報告されている。ポジティブな記憶想起はこれを逆方向に変化させ、リスク追求傾向へと回復させることができることが示唆された。さらに、「自然環境とのふれあい」介入については、患者の療養環境の改善を意識して、うつ病患者を対象に自然環境の画像鑑賞による気分向上効果を検証した。当該研究は現在データ解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には在宅治療プログラムの作成を計画しており、その基本プログラムにおける三つの行動介入法の決定が主な研究内容である。研究実績から、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において検証した介入案を踏まえて、抑うつ症状だけではなく、うつ病における情動認知障害の改善にも寄与できる在宅治療プログラムを作成していく。また、作成したプログラムの有効性を検証するため、うつ病患者を対象にランダム化比較試験を行う。
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