研究課題/領域番号 |
22K15780
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥山 純子 (林) 東北大学, 大学病院, 助教 (40791108)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | デジタル心理支援 / 児童青年精神医学 / 災害精神医学 / デジタルサイコロジカルサポート |
研究開始時の研究の概要 |
青年の自殺が死因の1位となっているのは, 先進国において我が国だけである. また, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において, 青年の心理状態はさらに悪化しているものと考えられる. 本申請課題では, 1)COVID-19パンデミック下において高校生が自ら心理状態を経時的に観察し, 2)申請者も経時的に高校生の心理状態を観察し, 心理的危機状態において即時に検出するシステムを開発する. 自ら日々の心理状態を客観的にとらえることと, 第三者が心理状態の変化を見守り,肯定することによって青年の自己肯定感が上昇し, 幸福感が高まると考えられる.
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研究実績の概要 |
1)自然災害下における児童青年のメンタルヘルスについての検討: ①2023年7月以降の記録的大雨による秋田県での心理的影響:近年、日本は地震や台風、大雨、大雪、噴火などを原因とする自然災害の被害が増加している。2022年度検討したCOVID-19パンデミックだけではなく、児童思春期の心性には養育者や教師など成人の身体や精神状態が大きく影響を及ぼすと考えられる。そこで、本研究では2023年7月以降の記録的大雨による秋田県での心理的影響に関してWeb調査を行った。記録的大雨の3ヶ月後と6ヶ月後において、抑うつ症状、不安症状、ストレスのスコアに関して両者間に有意差はなく、状態の改善は確認されず、また被害6ヶ月後において、全体の27%にPTSD症状が認められることが分かった。 ②災害後の被災者ケアに関するパンフレットの検討:災害後の被災者が身体的および心理的に回復していくためには、被災者ケアについての情報を得ることが一助となると考えられる。そこで、2019年1月に東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)災害と健康プロジェクトユニットが発行した「『被災後ケア』ココロとカラダを回復させる10のこと」を用いて都道府県の防災に関係する役所の部署に送付し、パンフレットの満足度調査を行った。 2)高校生におけるスマートフォンアプリによるメンタルヘルスのモニタリングと改善についての検討: ①大学生の世代を対象とした検討:スマートフォンアプリme-fullnessの使用について共同研究の提案をいただいた環太平洋大学の女子大学生を対象に、高校生の次の世代における生活や心理状態について聞き取り調査した。また、1か月間me-fullnessアプリ使用の調査を行った(使用者85名;アプリ非使用者40名)。アプリを使用した群は、抑うつ症状、不安症状、ストレスが統計的に有意に改善した (P < 0.005)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)me-fullnessアプリによる心理状態改善効果を確認:高校生の心理状態のモニタリングと介入のために、共同研究契約を結んでいただいた環太平洋大学の女子学生を対象として、アプリの実証調査を行った。高校生の次の年代における、アプリの心理状態改善効果を確認することができた。本結果について、第36回日本総合病院精神医学会総会などで報告を行い、有用性についてディスカッションを行うことができた。 2)自然災害後の心理状態について成人を対象とした検討を行った:児童思春期の心性には養育者や教師など成人の身体や精神状態が大きく影響を及ぼすと考えられる。そこで秋田県で発生した2023年7月以降の記録的大雨後の心理的影響についてのWeb調査を行い、被災後からどのように心理状態が改善するかについて縦断調査を行った。本研究結果については新聞記事にも掲載され、一般の人々への啓蒙を推進することができた。 また災害後の回復のために成人が情報を持っていることが必要と考え、2019年1月に東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)災害と健康プロジェクトユニットが発行した「『被災後ケア』ココロとカラダを回復させる10のこと」を用いて都道府県の防災に関係する役所の部署に送付し、パンフレットの満足度調査を行った。本結果はScientific Reports誌に掲載され、日本だけではなく世界各国において一般の人が被災後ケアについての知識を得る重要性と、そのための分かりやすいパンフレット作成の必要性を広めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)心理改善のためのデバイスの開発:2022年度の高校教諭を対象とした聞き取り調査では「高校生にスマートフォン利用を勧めることは難しい」との意見が得られた。またスマートフォンを暗所などの環境や長時間の使用したり、使用時の姿勢などからビジュアルディスプレイターミナル(VDT)症候群を生じる恐れも考えられる。そこで本年度では、心理状態改善方法として新たなデバイスを検討する。すなわち、五感の中で触感に焦点を当てて、手触りや温度などによって心理状態を改善するデバイスを開発する。 2)アプリの心理改善プログラムの短縮化:環太平洋大学でのme-fullnessアプリ使用後のインタビューで、「心理状態改善のプログラムを見ている時間が長い。寝る前にそんなに長い時間を費やすことができない」「忙しいときには、一刻も早く寝たいので、アプリを使うのをためらう」との意見が出た。そこで心理状態を改善させるプログラムをより短縮化するため、プログラム鑑賞中の脳活動をNIRSによって計測し、心理状態を改善させる最短の時間を明らかにする。 また心理状態の改善プログラムをスマートフォンの画像や音楽だけでなく、香りや触覚なども組み合わせることによって、より効果的にそして短時間に効果を得るための検討を行う。さらに、対象者が心理状態改善プログラムに対して飽きないために、どれくらいの頻度でme-fullnessアプリを使うのが適切かについて、脳活動をNIRSによって計測し、効果的にme-fullnessアプリを使うための提案を検討する。
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