研究課題/領域番号 |
22K15798
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金平 孝博 北海道大学, 大学病院, 助教 (30875068)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | Lymphopenia / Lung cancer / NTCP model / 放射線治療 / 正常組織有害事象発生確率モデル / リンパ球減少 |
研究開始時の研究の概要 |
肺癌放射線治療後のリンパ球数の低下と生存率悪化の関連を示す報告が増え、リンパ球減少予測ついて研究されている。しかし、再放射線治療において、過去の照射による臓器のダメージ・回復が考慮された予測モデルがない。本研究では、過去の線量を考慮することでより正確なリンパ球減少予測モデルの構築を目指す。また構築モデルを用いて、シミュレーションによりリンパ球減少リスク低減の可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
放射線治療におけるリンパ球減少症は、肺癌を含む様々な癌において生存率の悪化との関連が報告され重要な有害事象としての認識が高まってきている。本研究では、肺癌再照射症例のリンパ球減少を予測することを目的とした。 まず、放射線治療データとリンパ球数データから、ロジスティック回帰を用いてリンパ球減少発生確率の予測モデルを作成した。照射直後のリンパ球減少率をモデルに組み込むことで予測精度の向上が示唆され、2023年の欧州放射線腫瘍学会にてその成果が発表された。実臨床の応用では、治療初期段階にてより正確に高リスク群を特定し早期対策が可能となると考える。また、リンパ球減少率は、患者個々の放射線感受性情報を含んでいると考えられ、再照射時の高リスク群の特定に対しても有効であると考える。 次に、別の予測アプローチとして、人体のリンパ球循環を模擬したコンパートメントモデルを開発した。放射線によるリンパ球数の時系列変化の予測が可能となり、その成果は2023年の日本放射線腫瘍学会にて発表された。このモデルでは、患者毎について放射線感受性とリンパ球生成速度が推定され、これらの推定値は再照射時のリンパ球数予測に有効であると考える。 さらに、生存率解析においてリンパ球数減少期間の増加と生存率悪化との関連が確認され、2023年の日本放射線腫瘍学会で発表された。リンパ球減少に関して、最も臨床的に関連のある指標は明らかになっておらず、リンパ球減少期間は重要な指標の一つとしてさらなる検証が必要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、リンパ球減少予測モデル構築に向けて、概ね順調に進行している。人体のリンパ球循環を模擬するコンパートメントモデルを開発し、 患者個々の放射線感受性とリンパ球生成速度の推定し、放射線照射によるリンパ球数の時間的変化の予測が可能となった。放射線以外の血液毒性のある因子をモデルに組み込むことでさらなるモデル改良を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点の構築されたコンパートメントモデルは放射線照射によって起こるリンパ球数の変化の予測が可能であるが、化学療法による血液毒性の影響が考慮されていない。今後の研究では、化学療法の影響をモデルに組み込むことで、予測精度をさらに向上させることを目指す。 まず、化学療法の種類毎にリンパ球数への影響を分析してその影響を定量化する。得られた化学療法のリンパ球数への影響データを現在のコンパートメントモデルに組み込み、放射線と化学療法の両方の影響を考慮した予測モデルを開発する。 最後に、新たに構築されたモデル精度検証において、モデルが予測するリンパ球数の変化と実際の患者データとの間にどれだけの一致があるかを評価し、必要に応じてモデルの微調整を実施する。最終的に、放射線治療だけではなく化学療法の影響も考慮した包括的なリンパ球数予測モデルを確立させる。
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