研究課題/領域番号 |
22K15811
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
玉熊 佑紀 長崎大学, 放射線総合センター, 助教 (10854424)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 体外計測 / 内部被ばく / ホールボディカウンタ |
研究開始時の研究の概要 |
原子力事故発生時に放射性物質による作業者及び住民の内部被ばく線量評価が放射線防護分野で最も重要な課題の一つである。内部被ばく線量評価手法の一つであるホールボディカウンタを用いた体外計測では、体内に放射性物質が均一に分布することを前提される場合が殆どである。しかし、実際には様々な条件により不均一に分布するため、この前提は線量評価に大きな不確かさを生む。本研究は、ホールボディカウンタを用いた体外計測における放射性物質の体内分布の影響を明らかにし、実際の体内分布を反映すると同時に簡単かつ高精度に測定可能な手法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は原子力災害等により放出される放射性核種を体内に取り入れたことにより生じる被ばく(内部被ばく)の線量評価手法として用いられる体外計測法に着目し、測定対象の年齢・性別に評価結果が影響を受けないような体外計測手法の確立を目的としたものである。 令和5年度は国際放射線防護委員会(ICRP)により開発された人体内で放射性核種がどのような挙動を示すか計算するためのモデル(体内動態モデル)について文献調査を行い、方程式解法ソフトウェアにモデルを導入することにより、成人に対する放射性セシウム(Cs-137、Ba-137m)の体内動態を各吸収タイプ(type F, type M, type S)で計算した。ICRPの文献に示されている経時的な放射性核種の存在割合と本研究の計算結果を比較した結果、5%以内で一致しており、ICRPのモデルをよく再現できたことが確認された。 また、体内動態モデルにより得られた放射性核種の挙動が測定効率に対してどのくらいの影響を及ぼすか評価するため、ICRPボクセルファントムの各臓器及び組織を線源とした場合の測定効率をモンテカルロシミュレーションにより計算した。文献調査により、ボクセルファントムで規定されている臓器及び組織と体内動態モデルで用いられているコンパートメント(臓器または組織)の対応付けを行った。これにより、モンテカルロシミュレーションで得られた各臓器・組織が線源である場合の測定効率に対して体内動態モデルで計算した組織での放射性核種の存在割合で重みづけを行うことにより、体内動態を反映した測定効率を評価した。現在計算が終了している測定効率を用いて暫定的に評価した体内動態を反映した測定効率は吸収タイプがtype F, type M, type Sの場合と体内均一分布の場合を比較すると、その差はそれぞれ2, 10, 35%であった(摂取から100日後)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度における計画通り、国際放射線防護委員会による体内動態モデルを文献調査し、方程式解法ソフトウェアを用いて再現を行うことができた。またこの計算結果を利用して体内動態が測定効率に与える影響も暫定的に評価できた。 さらに、測定手法の開発と検証に関して量子科学研究開発機構が保有する線源位置を任意に変更できる人体物理ファントム(IGORファントム)を用いて、胸部に偏って線源がある場合の測定効率を評価することができた。令和5及び6年度実施予定であった測定手法の開発についても着手することができており、当初の計画に従いおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
任意に線源位置を変更することができる人体物理ファントムを用いた測定及びモンテカルロシミュレーションを組み合わせることで、体内動態を補正するための手法開発に引き続き取り組む。また、量子科学研究開発機構において、内部被ばくで想定されうる様々な放射性核種の体内分布を人体物理ファントムで再現し、本手法の妥当性検証を行う。
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