研究課題/領域番号 |
22K15857
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋本 拓磨 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50799145)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 低酸素 / がん細胞 / DNA修復酵素 / DNA-PKcs / Akt / 放射線抵抗性 / がん幹細胞 / DNA修復因子 / 癌細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
癌の放射線治療において低酸素細胞は放射線抵抗性抵抗性であり、その存在が放射線治療成績に大きな影響を与える。研究代表者らは、低酸素状態でDNA修復酵素であるDNA-PKcs、ATMが活性化すること、ATMの活性化はエネルギーバランスセンサーAMPK/転写因子Sp1により制御されること、AMPKの抑制により低酸素状態の腫瘍細胞を選択的に放射線増感できることを明らかにした。しかし、通常酸素下の感受性までには戻らず、DNA-PKcsやAkt情報伝達経路の関与が考えられた。これらの解明により、効果的に腫瘍細胞を放射線増感させることを目指す。
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研究実績の概要 |
固形の腫瘍では、不十分な腫瘍血管の成長により低酸素・低栄養環境が生じる。また、放射線抵抗性の癌幹細胞は、多くの場合ニッチと呼ばれる低酸素・低栄養環境にある。低酸素細胞は放射線抵抗性を示すが、同時に低栄養であると低酸素誘導因子HIF-1は抑制されるため、HIF-1の寄与は限定的と考えられる。これまでに研究代表者は、高い放射線抵抗性を示す低酸素状態の癌細胞における新規な分子機序として、1)DNA2重鎖切断修復酵素であるDNA-PKcs、ATMの発現および活性が亢進すること、2)ATMの発現や活性の亢進はエネルギーバランスセンサーAMPK/転写因子Sp1により制御されること、3)AMPKの発現抑制により、低酸素状態の癌細胞を選択的に放射線増感できることを明らかにしてきた。しかし、通常酸素下の感受性までには戻らず、AMPKの発現抑制では、低酸素状態におけるDNA-PKcsの発現や活性の亢進は抑制されなかった。そのため、低酸素状態における放射線抵抗性には、AMPK/SP1/ATM経路以外にも、DNA-PKcsや生存シグナルAkt情報伝達経路の関与が考えられた。本研究では、これらの分子機序の解明により、効果的に癌細胞や癌幹細胞を放射線増感させることを目指している。本年度は、低酸素状態の癌細胞株において、DNA-PKcsおよびAktに加えて、がん原遺伝子Src、上皮成長因子受容体EGFRの活性を担うリン酸化部位への影響、およびDNA-PKcsの細胞内局在変化を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、低酸素状態がDNA-PKcs、Akt、がん原遺伝子Src、上皮成長因子受容体EGFRの活性を担うリン酸化部位に影響を与えるかをウェスタンブロッティングにより解析した。その結果、特に、重度な低酸素状態のヒト神経膠芽腫細胞株(T98G)において、DNA-PKcs、Akt、Src、EGFRのリン酸化が顕著に亢進することが明らかになった。さらに、重度な低酸素状態における、DNA-PKcsおよびDNA損傷応答マーカーγ-H2AXの細胞内局在への影響を蛍光免疫染色法により検証したところ、DNA-PKcsおよびγ-H2AXは核内全域に局在した一方で、DNA修復経路とは異なる重度な低酸素状態に特異的な応答を示唆する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
放射線照射によるDNA損傷時には、DNA-PKcsとAktは相互作用することから、重度な低酸素状態において、DNA-PKcsがAktと共局在するかを検証する。また、DNA-PKcsが相互作用するタンパク質群の探索を行う(免疫沈降法)。DNA-PKcsに対する阻害剤(NU7026等)、またはsiRNAを用いて発現抑制した場合についても解析し、相互作用している結合タンパク質を比較し、標的分子の候補とする。重度な低酸素状態において、DNA-PKcsとγ-H2AXが協調的にDNA損傷応答を行うかについても検証する。
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