研究課題/領域番号 |
22K15868
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山雄 健太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10716351)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 膵癌早期診断 / 3D-CT / 膵実質部分萎縮 / AI診断 / 微小膵癌 / 膵実質部分の部分的萎縮 / 膵管狭窄 / 膵実質萎縮 |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌は予後不良な癌腫であるが、微小膵癌の段階であれば予後は良好である。しかし腫瘍径が小さいため、各種画像検査での描出は困難である。微小膵癌の診断に有用な間接的な所見として、 申請者らは膵実質の部分的萎縮が2次元CT検査において、高頻度に観察されることを報告した。しかし通常の2次元CTでは膵実質の部分的萎縮は評価が困難なことが多い。3次元CTは対象臓器を立体画像として表現できるため、萎縮を含めた膵実質形態をより俯瞰的に評価でき、膵管狭窄症例の中から効率的に微小膵癌を拾い上げられると考えた。本研究では最新の3次元CTを用い、膵癌の予後改善につながる微小膵癌の診断法の確立を目的とした研究である。
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研究実績の概要 |
膵癌の予後改善のためには早期発見が必須である。多くの研究がなされているものの、いまだその解決には至っていない。主膵管狭窄は早期膵癌の診断に有用な画像的として位置付けられているものの、この所見は慢性膵炎やIPMNなどの良性疾患でも認められる。申請者は以前に主膵管狭窄部に一致した膵実質の部分的な萎縮が早期膵癌の診断に有用であることを報告した。しかしながらこの部分的萎縮の評価は主観性が強く、客観的な評価に課題があると考えた。近年、医療画像処理技術の向上により、撮像した2DイメージのCTデータを3D構築することができるようになった。本研究は早期膵癌の膵実質を3D構成することで、これを客観的に形態評価でき、その診断に有用となるかを評価することを目的に計画された。 早期膵癌症例15例および健常者のCTデータを用い、膵実質を3D構成した。早期膵癌症例で、部分的萎縮部が明瞭に描出されたと考えたものの、これを第3者2人の評価として観察者間一致率(kappa値)を算出したが、0.31と客観的評価は困難と考えた。次に膵実質の体積の差がその診断に有用と考え、これを算出したが、癌 or 非癌以外に年齢や体格による要素も膵臓の体積に影響を及ぼす可能性があり、その評価方法も妥当ではないと判断した。 近年、各種画像診断におけるAI診断の有用性が報告されている。当院でもAIに関する研究を盛んに行なっていることから、"早期膵癌の3D-CTによるAI診断の有用性を検討する研究"に方針を変更し、研究を遂行することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像解析ソフトウェアを用いて、膵臓の3Dイメージから部分的萎縮を検知する手法を探索した。膵実質の部分的萎縮は3Dイメージ上では、鞍状にくぼんだような形状として観察される。したがって、イメージ境界のガウス曲率を算出し、一定以上この変形を来たしている部分をハイライトすることで、3次元的な膵実質の部分的萎縮を可視化することができた。また膵実質の体積比較については個体差が大きいという問題があったが、経時的な画像検査を実施されていた同一症例内で検討した場合、萎縮が進行するにしたがって体積の減少が確認できた。このように数値表現可能な形状解析に落とし込むことが、客観的評価に貢献する可能性を示すことができ、概ね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに症例を集積し、学会発表などで議論を深めながら、有用な形状解析手法及びパラメータを確立していく。さらに自動腹部臓器マルチセグメンテーションモデルとの統合により、end-to-endなモデル開発を目指し、解剖学的なドメイン知識を融合した再現性の高い部分的萎縮検知モデルを構築する。注目すべき形状変化を数値化する手法は、膵管形態異常など他の所見にも展開できるポテンシャルを秘めており、本研究を進めながらその可能性を常に探っていく。
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