研究課題/領域番号 |
22K15873
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 福井県立病院(陽子線がん治療センター(陽子線治療研究所)) |
研究代表者 |
松下 慶一郎 福井県立病院(陽子線がん治療センター(陽子線治療研究所)), 陽子線治療研究所, 研究員(医学物理士) (10769847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 深層学習 / 陽子線治療 / PET / AI |
研究開始時の研究の概要 |
陽子線治療は高い線量集中性を有する優れた治療法であるがその利点を最大限に活かすためには実際の陽子線照射領域、体内飛程及び体内線量分布を評価することが重要である。体内線量分布の情報因子として陽子線照射により生成される消滅γ線分布が挙げられる。しかし物理反応の違いにより体内消滅γ線と体内線量分布を直接対応付けるのは困難である。 本研究では代表者がこれまで測定してきた断面積データ、モンテカルロシミュレーション技術及びAI技術を用いて消滅γ線の強度分布と陽子線の飛程・線量分布を対応付ける深層学習モデルを構築し、陽子線治療における体内飛程及び体内線量分布を評価する陽子線治療技術の研究・開発を行う。
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研究実績の概要 |
陽子線治療はブラッグピークを利用した高い線量集中性を有する優れた治療法であるが陽子線治療の利点を最大限に活かすためには、実際の陽子線照射領域、体内飛程及び体内線量分布を評価することが重要である。 人体に陽子線を照射すると入射陽子と人体を構成する原子核が衝突し原子核反応を引き起こす。これにより陽電子放出核が生成され消滅ガンマ線が放出される。この消滅ガンマ線の強度分布をPETで測定することで陽子線の照射領域を観測することが可能である(放射化PET)。しかし物理反応の違いにより消滅ガンマ線の強度分布と陽子線の飛程・線量分布を直接対応付けることは困難である。 本研究では深層学習を用いて、陽子線照射により発生する消滅ガンマ線強度分布(放射化PET)情報から陽子線の飛程及び体内線量分布を評価することができるシステムの研究・開発を目的とする。 本年度は昨年度に作成した深層学習モデルをベースに実際の放射化PET画像と線量分布を対応付ける深層学習モデルの構築を行った。深層学習モデルの構築にはTensorflowを用い、学習ネットワークには3DV-netを用いた。構築した学習モデルは放射化PET画像のみではなく、CT画像も同時に入力データとして学習させることで出力される予測線量分布の精度を向上させることができた。放射化PET画像、CT画像、線量分布データを学習させ放射化PET画像、CT画像を入力データにして交差検証を実施した。出力される予測線量分布と治療計画線量分布をガンマ解析等で評価を行った。ガンマ解析の結果最も精度の高い症例では、判定基準3mm3%で85%のパス率を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度の初期検討で作成した深層学習モデルをベースに、実際の放射化PET画像から線量分布を出力するモデルを構築した。昨年までのモデルでは2次元画像で処理をしていたが、予測線量分布で画像スライス間を滑らかに表現できない問題点があった。そのため昨年度の深層学習モデルを3次元画像へ対応できるように改良を行った。学習モデルの構築にはTensorflowを用いた。学習ネットワークには当初3DU-netを用いていたが、3DV-netに変更することで予測精度を向上させることができた。また入力データには放射化PET画像だけではなくCT画像もセットで入力、学習することで予測精度を向上させることができた。モデルの精度検証のために、過去に当院で前立腺がんへの陽子線治療が実施された患者の放射化PET画像、CT画像及び治療計画情報を匿名化して画像反転などのデータ拡張を行い、交差検証を実施した。症例数は42件で22件は1日1門照射(対向照射を日替わりで交互に照射)、20件は1日2門対向照射の治療であった。出力された予測線量分布と正答線量分布(治療計画線量分布)をガンマ解析で比較した結果、判定基準3mm3%で平均65%のパス率であった。予測精度が良かった症例で85%、悪い症例で46%であった。 予測精度が悪い症例の治療計画を見ると、OARの線量制約を満たすために精嚢の線量を落としておりsagittal面で見ると線量分布が均一ではなく一部(精嚢付近等)が尖ったり凹んだりする形状をしていた。一方予測精度が高かった症例の治療計画を見るとsagittal面で均一に近い線量分布となっていた。精度の悪い症例については症例数を追加していくことで精度の向上が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は実際の放射化PET画像を用いて線量分布を予測する深層学習モデルを構築した。予測精度はガンマ解析3mm3%で最大85%であり今後の精度向上が必要である。臨床への応用を考えた場合、低線量領域はOARに大きく影響しないと考えられるため高線量領域のみに着目した解析やDVHを用いた評価を現在実施中である。今後症例数の追加、学習ネットワークの変更・改良を行い予測精度向上を目指す。またこれまでの結果を学術大会等での報告を目指す。
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