研究課題/領域番号 |
22K15880
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤坂 太 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00883224)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 7T / MRI / GRASP / GRASP-MRA / 脳動脈瘤 / 拍動 / 超高磁場 / 圧縮センシング |
研究開始時の研究の概要 |
脳動脈瘤破裂による死亡率は35-50%と高く、破裂率を正確に予測することが必要である。脳動脈瘤の拍動が破裂の重要な予測因子として報告されて久しいが、その評価は難しく未だ標準的と言える手法は存在しない。近年、主に4D-CTAを用いた脳動脈瘤拍動に伴う形状変化を定量的に計測する論文が相次いで発表され、大いに注目されている。本研究では超高磁場(7T)MRIを用い、体幹部や心臓を自由な呼吸・拍動下に撮像可能なGRASPと呼ばれる撮像法を基に、脳動脈瘤を高い空間的・時間的解像度で描出可能な画像再構成法を開発することで拍動を4D画像として可視化し、破裂の予測につながる計測法を開発することを目指す。
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研究実績の概要 |
脳動脈瘤の拍動が破裂の重要な予測因子として報告されて久しいが、その評価は4D-CTAを用いた研究が多い。本研究では被爆のない超高磁場(7T)MRIを用い、造影剤を用いず、体幹部や心臓を自由な呼吸・拍動下に撮像可能なGRASPと呼ばれる撮像法を基に、脳動脈瘤を高解像度・高時間分解能で描出可能な撮像法・画像再構成法を開発する。本手法により未破裂脳動脈瘤を撮像し、その拍動を3D動画として可視化し、破裂の予測因子につながるロバストで定量的な計測法を開発することを目指す。 上記目的のため昨年度までに、脳動脈瘤の拍動を模擬したファントムを作成し、MRIパルスシーケンスプログラムおよび画像再構成プログラムを作成し、撮像・画像再構成を実施した。MRIパルスシーケンスにはk空間上のkx,ky平面において黄金角(111.25°)で回転する読み取りスポークを用いたラジアルスキャンを用い、kz方向に積み上げることで3D化するstack-of-starsの手法を用いた。撮像データを拍動ポンプが出力するパルス信号と同期させることで、1心拍内の形状変化を3D動画として再構成するプログラムを開発した。 本年度はMRI装置(Magnetom 7T, Siemens Healthineers)から出力される撮像データのタイムスタンプの不正確性に悩まされたが、再構成プログラムにおいて対応し、ファントムの模擬動脈の拍動を解像度0.5mm等方ボクセル、最高96フレーム毎秒の超高速撮像に成功した。 次に被験者の脳動脈の拍動の描出を試みた。同期の方法を拍動ポンプから被験者の脈拍に変更した点以外はほぼ同様の手法であるが、ミリ秒単位の精度を確保するために取得した脈拍データのアップサンプリングや正規化などの適切な信号処理を要した。最終的にはファントム同様の空間的・時間的解像度で脳血管の3Dシネ画像の撮像に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はファントム撮像において脈動ポンプの拍動速度の設定によっては拍動が描出されないという問題に直面したが、これはMRI装置の出力する画像データの各読み出し走査のタイムスタンプが実際の時刻とずれていたことが原因であった。MRIシーケンス自体はプログラム通りに実行されており、タイムスタンプを再構成プログラム内で擬似的に作成することで解決した。以後、繰り返し時間(TR=およそ12ミリ秒)以上の任意の時間的解像度(=およそ80フレーム毎秒以下)および解像度0.5mm等方ボクセル以上の空間解像度で3Dシネ画像が撮像可能となった。撮像に要する時間は撮像するスラブ厚に比例し、現状は撮像範囲が160x160x11mmであれば約7分、160x160x22mmであれば約14分である。未破裂脳動脈瘤のサイズは大半が最大径2cm以下であるため、殆どの動脈瘤を14分以下で撮像可能、多くは7分で撮像可能である。 被験者の脳動脈の撮像の際には、被験者の脈拍とMRIシーケンスの同期を7T MRI装置付属の脈波センサーを用いた。脈波センサーのサンプリングレートは40Hz(=25ミリ秒単位)であり、ミリ秒単位以上の精度を要するMRIシーケンスとの同期は不正確となる。また呼吸変動による信号の変動が大きく、ピークやトラフの検出精度を確保するのが困難であった。これらに対応するため脈拍データのアップサンプリングや正規化などの信号処理を試行錯誤し、最終的にはファントム同様の空間的・時間的解像度で脳血管の3Dシネ画像の撮像に成功した。 以上の手法を用いて、ボランティア5名と脳動脈瘤患者(右内頸動脈瘤、9mm大)を撮像した。いずれも脳血管の生理的な拍動が描出され、内頚動脈から中大脳動脈に伝搬する血管径の微妙な変化も描出された。脳動脈瘤は基部の1mmほどの壁運動が観察されたが、その他の部位では明確な拍動はみられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
画像再構成に際に各時相のk空間データは大幅にアンダーサンプリングされているため、フーリエ変換にて生成される各時相の3D画像は非常にノイジーである。GRASPを応用した本研究では圧縮センシングを用いてノイズを除去してるが、その際に用いる正則化パラメータの決定は現状では恣意的に行われている。これは多大な時間・計算力を要するため、自動化する手法を開発する。 同時に、撮像された3Dシネ画像から脳動脈瘤の拍動の定量的評価手法の開発を行う。現案として全ての時間相の3D画像から共通部を抽出し、各時間相画像との差分を取ることで、拍動による変化部のみの3Dシネ画像を生成する。このみかんの皮のような3D画像に対して、各ボクセルにおいて厚みを自動的に計測するアルゴリズムを用いて、壁運動量を定量化する。
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