研究課題/領域番号 |
22K15902
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
神農 英雄 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40788387)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 新生児 / ニューロン / 神経幹細胞 / 脳傷害 / 脳室下帯 / 再生 |
研究開始時の研究の概要 |
神経学的後遺症をきたす新生児脳傷害は現代でも発生している。傷害をうけた脳組織を再生させる治療法はなく、その開発が急務である。 生後の脳にも神経幹細胞が存在して神経細胞(ニューロン)が産生されるため、この機能を利用した再生戦略が注目されている。脳に存在する神経幹細胞を利用して新生児脳傷害の再生医療を実現するためには、ヒト新生児にも脳の再生機構が存在するか検証する必要がある。 本研究は、ヒト新生児脳にそなわる傷害後の再生能力とその制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。ヒト脳組織に加え、ヒトと同等の脳構造をもつブタを用いて、遺伝子の網羅的解析を含めた独創的アプローチを行う。
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研究実績の概要 |
研究協力者が研究機関で入手・免疫染色したヒト新生児脳傷害患児(生後3か月以内)の固定脳切片を用いて免疫組織学的解析を行った。脳室下帯における増殖細胞数は、脳傷害群において、コントロール群(非傷害)と比較して増加していた。同様に、同部位における新生ニューロンの数も傷害群で増加していた。さらに、脳室下帯の周囲の白質領域における新生ニューロン数も傷害群で増加していた。これらの結果から、ヒト新生児脳においても脳傷害後では脳室下帯におけるニューロン産生および傷害部への移動が増強されることが示唆された。 次に、ヒト新生児脳組織から得られた上記知見についてさらに深く解析を行うため、ヒト新生児脳と類似した脳構造を持つ新生仔ブタを用いた。ヒト新生児脳傷害のほとんどが虚血性脳傷害であることを考慮し、強力な血管収縮剤であるエンドセリンを脳室下帯の周囲の脳実質内へ注入して新生仔ブタ虚血性脳傷害モデルを作成した。本方法で、ブタの生存率を高く維持しながら、傷害1週間後に脳室周囲に局所性の傷害が作成されていることを免疫組織学的解析で確認することができた。本モデルを用いた免疫組織学的解析から、ヒト新生児脳で見出した知見(脳傷害後に脳室下帯の増殖細胞数、新生ニューロン数が増加すること、脳室周囲の傷害部領域における新生ニューロン数が増加すること)が同様に確認された。このことから、本脳傷害モデルがヒト新生児脳傷害を反映することが確認できた。 上記を踏まえ、ヒト新生児(および新生仔ブタ)に備わる脳傷害後の再生メカニズムを解明するため、新生仔ブタの脳室下帯から神経幹細胞を取り出しRNA-seqによる網羅的遺伝子解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に計画していた実験を全て完了することができ、期待できる知見を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
新生仔ブタ神経幹細胞の網羅的遺伝子解析を行い、ヒト新生児(と新生仔ブタ)に備わる脳傷害後再生メカニズムを見出す。具体的は以下を行う。 ①新生仔ブタ脳室下帯から神経幹細胞をフローサイトメトリーを用いて単離する。単離された神経幹細胞からRNAを抽出し、シークエンサーを用いたRNA-seq解析により、神経幹細胞に発現する遺伝子を網羅的に解析する。得られたデータを解析ツールを用いて遺伝子発現量を傷害群と健常群で比較し、脳傷害後のニューロン産生の増強にかかわる候補分子を見出す。候補分子の発現の有無、強度、細胞分布などについて、免疫組織学的解析やウェスタンブロッティングなどで確認する。 ②遺伝子解析結果から着目した分子のタンパク製剤や阻害剤を、脳傷害後の新生仔ブタへ投与し、脳室下帯の細胞増殖および新生ニューロンの産生・傷害部へに移動がどのように影響するか解析する。
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