研究課題/領域番号 |
22K15928
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中島 由翔 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00905408)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 高機能型FVIII / 血友病A / 高機能型第VIII因子 / 遺伝子治療 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、血友病Aの遺伝子治療の開発は進んでおり、海外では様々なアプローチを用いて高機能型第VIII因子(FVIII)を作成する報告が散見されるが、その機能は野生株のFVIIIの約2倍程度であり、臨床応用には不十分であるのが現実である。また、FVIIIの活性化・不活化機序や各凝固因子との相互作用からアプローチしている報告はほとんどない。FVIIIの活性化を亢進するとともに、他の凝固因子との相互作用を高める変異およびFVIIIの不活化を抑制する変異を組み合わせることで、5-10倍の高機能型FVIIIの作成を行い、高活性型FVIII製剤の開発や血友病Aの遺伝子治療への臨床応用を目指す。
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研究実績の概要 |
BHK細胞によるFVIII発現系を用いて変異FVIII(D519V/E665V/K1813A)を作成し、変異FVIIIの比活性を測定したところ、D519V/E665V/K1813AがWild type (WT) FVIIIの約4倍の比活性を認めた。このD519V/E665V/K1813A(10 nM)にトロンビン(30 nM)を添加し、FVIII活性の不活化速度を凝固一段法で経時的に測定したところ、D519V/E665V/K1813Aにおけるトロンビン活性化後の不活化はWTより約50倍抑制されていた。この結果より、D519V/E665V/K1813AはWTよりA2解離速度が著明に抑制されることが示された。 D519V/E665V/K1813Aの包括的凝固能についてWTと比較検討したところ、トロンビン生成試験において、WT 8nMとD519V/E665V/K1813A 1nMがほぼ同等の凝固能を示すことがわかり、D519V/E665V/K1813AはWTより8倍程度の凝固能を有することが示された。D519V/E665V/K1813AとWTをF8-Knock out (KO)マウスに投与し、凝血学的効果について尾端切断後出血量を用いて評価したところ、D519V/E665V/K1813A 0.25μg/kg投与時の出血量は、WT 2μg/kg投与時の出血量が同等であることがわかった。以上の結果から、D519V/E665V/K1813AはWTと比較して約8倍程度の凝固能を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
K1813AがA2解離速度を抑制することでWTの約2倍高い凝固能を有する高機能型FVIIIであることをin vitro実験系で明らかにし、またK1813Aがin vivoにおいてもWTより約2-4倍の凝固能を有することを示した。その成果について、2022年にオンラインでBlood Advances誌に掲載された。D519V/E665V/K1813A変異体については、現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、高機能型FVIII変異体作成のプランとして、FIXaとの親和性が亢進するK1813Aの変異を基にさらに①プロテインSや活性化プロテインCによる不活化を抑制する変異(Takeyama et al., Br J Haematol, 2008, Takeyama et al. Thromb Haemost. 2013)、②トロンビンによるFVIII活性化を増強する変異(Nakajima et al. J Thromb Haemost. 2021)、③FXとの親和性を亢進する変異などを加えることで、比活性がWTの10倍以上のFVIII変異体の作成を目指す。
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