研究課題/領域番号 |
22K15931
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
瀬谷 大貴 東京慈恵会医科大学, 医学部, ポストドクトラルフェロー (30806021)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 肺高血圧 / 病態モデル / 肺静脈 / 肺循環障害 |
研究開始時の研究の概要 |
肺高血圧症(PH)は、肺動脈圧の上昇によって心臓と肺の機能障害をきたす難治性疾患である。PHの病態は、主病変が肺毛細血管の上流にあるか下流にあるかで大きく異なる。肺動脈性PH(PAH)は前者で、肺静脈狭窄・閉塞や左心性心疾患によるPH(post-capillary PH:pc-PH)は後者である。現在、pc-PHには確立された薬物療法はなく、その病態や薬理作用を研究するための適切な動物モデルも存在しない。本研究では、新たに創出した遺伝子改変マウスのpc-PH病態モデルとしての有用性を検証し、PAHとpc-PHの病態の相違点を明らかにするとともに、さらにpc-PHに有効な薬物療法を探索する。
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研究実績の概要 |
肺高血圧症(PH)は、肺動脈圧の上昇によって心臓と肺の機能障害をきたす難治性疾患である。本研究では、PHの中でも肺静脈狭窄・閉塞や左心性心疾患によって発症するPH(post-capillary PH:pc-PH)の病態を明らかにすることを目的としている。研究代表者らは、肺静脈の形成に必要不可決であることが報告されているホメオボックス転写因子Pitx2cに着目し、Pitx2c-floxedマウス系統(B6;129-pitx2tm1.1Sac/J)と筋小胞体膜蛋白サルコリピンのCreマウス系統(SLN-Cre)を交配させ、肺静脈および心房筋特異的なPitx2cコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを樹立した。Pitx2c-cKOマウスの組織重量を8週齢にて測定したところ、Pitx2c-cKOでは両心房(特に右心房)、右心室および肺の相対重量が有意に増加し、反対に左心室の相対重量は減少していた。さらに3ヶ月齢のPitx2c-cKOマウスに対して心臓超音波検査を実施したところ、Pitx2c-cKOマウスでは右心室が著明に拡大しており、肺動脈弁輪径の拡大と、右心室流出路通過血流の速度時間積分値(VTI)の増加を認めた。またPitx2c-cKOマウスでは、左心室の拡張末期径(LVDd)、収縮末期径(LVDs)および心筋重量(LVM)が減少していた。一方で、左心室内系短縮率(%FS)や三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)に差は認めず、Pitx2c-cKOマウスの心機能低下は示されなかった。心臓カテーテル検査において一部のPitx2c-cKOマウスに右心室圧の上昇を認めた。以上の結果から、Pitx2c-cKOマウスでは肺循環系が障害されている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に則り、Pitx2c-cKOマウスに対して心臓超音波検査および心臓カテーテル検査を実施した。また並行して、Pitx2c-cKOマウスから摘出した肺および心臓の組織切片を作製して、血行動態の評価および免疫組織化学実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Pitx2c-cKOマウスから摘出した肺および心臓の組織切片で、肺静脈の血管構造を詳細に観察する。特に、狭窄病変の有無について評価する。 (2)12ヶ月齢のPitx2c-cKOマウスに対して心臓超音波検査および心臓カテーテル検査を実施し、心機能を評価する。 (3)肺静脈狭窄症の患者では狭窄部において筋線維芽細胞の増殖を認め、これら細胞が血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)および血管内皮増殖因子2(VEGFR2)に強い免疫反応性を示すことが報告されている(Riedlinger et al. Cardiovasc Pathol. 2006)。Pitx2c-cKOマウスに狭窄病変が認められた場合は、これら因子の発現状況について検証する。
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