研究課題
若手研究
摂食障害(ED)は精神疾患の中で最も死亡率が高い予後不良疾患である。EDでは認知機能障害を認め、特にEDの最多病型である神経性やせ症(AN)では「認知の歪み」の是正とともに回復へ向かうが、認知機能を評価しうる客観的なバイオマーカーはない。近年脳機能研究が注目され成人ANにおける脳波周波数の低下などが示唆されているが、EDの脳波周波数と認知機能障害や予後との関連は不明であり、小児EDでの報告もない。そこで本研究では小児EDにおける脳波周波数が認知機能や予後に関連するバイオマーカーになりうるかを明らかにするとともに、脳波周波数、生化学的・心理社会的データを用いて小児EDの包括的病態解明を目指す。
今年度も引き続き小児の摂食障害(ED)の脳波データ蓄積と内分泌、生化学検査データ、骨密度や頭部MRIなどの画像検査を含めた臨床データの蓄積を行った。内分泌データの検討の一部として、未治療の摂食障害患者で14歳未満の小児に関して骨密度検査を解析した。初診から3ヶ月以内に骨密度検査を施行した38例において、背景因子は初診時BMI-SDSの中央値は-3.36SD、年齢13歳(範囲6-15歳) 、初診から3ヶ月以内の骨密度の同年代と比較したパーセンテージのmeanは92%(range69-116%)であり測定時のBMI-SDSのmeanは-2.92(範囲-5.96- 0.18)SDだった。BMI-SDSが軽症中等症群(-2.5SD以上)と重症群(-2.5SD未満)の2群にわけた比較では、骨密度の同年代と比較したパーセンテージ中央値 95%(範囲82-116%) と90%(69-107%)でp=0.178と明らかな有意差は認めなかった。初診時の年齢別(初診年齢が13歳未満群と13歳以上群)での比較では、中央値89.5%(範囲60-112%)と92.5%(76-116%) p=0.394と明らかな有意差はなく、全体として初診時から3ヶ月以内の骨密度は同年代比が80%以下に低下している例は多くなかった。初診後13ヶ月以降の骨密度検査を施行している摂食障害患者に関して骨密度予後良好群(骨密度同年齢比が80%未満)と骨密度予後不良群(80%以上)に分けて13ヶ月後のBMI-SDSを比較したところ-0.960SD(-4.54 - +1.81SD)と-2.225SD(-4.49 - +1.60SD)でP値=0.00151と明らかな有意差を認めた。
3: やや遅れている
症例蓄積、生化学データや脳波データなどの蓄積が順調であり生化学データ解析を先に進めており、脳波データ解析が少し遅れているため。
小児摂食障害患者において、引き続き症例蓄積、データベース構築、残余検体、脳波検査データ、内分泌検査データなどを蓄積していく。残余検体を用いてサイ トカインなどのバイオマーカーの測定を行う予定である。
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