研究課題/領域番号 |
22K15969
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白 暁鵬 九州大学, 大学病院, 助教 (40908688)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 腸内細菌 / 腸管運動 / VIP / 慢性特発性偽性腸閉塞症 |
研究開始時の研究の概要 |
無菌状態であるヒト胎児の腸管運動は微弱であり、出生後に腸内細菌をはじめとする外部環境に暴露されることで腸管運動が「成熟」、そして「維持」されることが示唆されている。腸管運動の「成熟」と「維持」の各時系列において腸内細菌が果たす役割と分子機構は未だ不明であるが、その破綻が指定難病である慢性特発性偽性腸閉塞症等の腸管運動障害と関与することが示唆される。 本研究では、マウスモデルを用いて、一旦「成熟」した腸管運動の「維持」における腸内細菌の役割と分子機構を明らかとする。動物モデルで解明された機序に基づいて、腸内細菌の視点より慢性特発性偽性腸閉塞症の病態解明と治療標的を探索する。
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研究実績の概要 |
通常の腸内細菌を有するマウス(SPF)、無菌マウス(GF)、単一菌種定着ノトバイオートマウス(EC:E.coli或はLB:Lactobacillus)に、in vivo消化管運動機能、ex vivo 腸管平滑筋収縮機能、Nanostringによる腸管組織遺伝子発現、蛍光免疫染色による筋間神経叢の蛋白質発現評価を行った。 胃排出機能は各群間に有意な差を認めなかった。腸管運動機能は、GF群でその他の群と比較して有意に低下し、経口金属ビーズの透視下観察では特に上部小腸の蠕動低下を認めた。腸管平滑筋収縮能に関して、カルバコール刺激による筋原性収縮能は各群間に有意な差を認めなかったが、Field stimulationによる収縮性はSPF群と菌定着群で、GF群と比較してコリン作動性神経が亢進し、強い収縮性を示した。一方、腸神経のアセチルコリン産生酵素(ChAT)の発現は各群間に有意な差を認めなかったが、それと共局在する神経にVasoactive intestinal peptide(VIP)の発現は腸内細菌が存在する3群はGF群のそれと比較して有意に強い発現を認めた。 VIP発現量は腸管運動機能と有意な正の相関を認め、腸内細菌が腸神経の発達を制御することが示唆された。さらに、EC(グラム陰性菌)群におけるVIP発現量と腸管運動機能はLB(陽性菌)群と比較して有意に亢進しているため、Toll like receptor (TLR)や腸管自然免疫の関与が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管運動の「成熟」における腸内細菌の必要性・役割と分子機構の解明を目指し、 無菌マウス(GF)と通常の腸内細通常の腸内細菌を有するマウス(SPF)、無菌マウス(GF)、単一菌種定着ノトバイオートマウス(EC:E.coli或はLB:Lactobacillus)という動物モデルを確立した。また、in vivo消化管運動機能、ex vivo 腸管平滑筋収縮機能、Nanostringによる腸管組織遺伝子発現、蛍光免疫染色による筋間神経叢の蛋白質発現評価を行い、各群に腸管運動の違いやVIP発現の違いを認めた。VIPが腸管運動の成立に必要であることが示唆され、この動物モデルの有効性を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
VIP発現量は腸管運動機能と有意な正の相関を認め、腸内細菌が腸神経の発達を制御することが示唆された。さらに、EC(グラム陰性菌)群におけるVIP発現量と腸管運動機能はLB(陽性菌)群と比較して有意に亢進しているため、Toll like receptor (TLR)や腸管自然免疫の関与が考えられたTLR経路が活性化されないMYD88-/-TRIF-/- マウスを用いて、無菌条件、SPF環境条件およびノトバイオート条件におけるVIP発現量と腸管運動機能を評価する予定である。
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