研究課題
若手研究
食物アレルギーは、食物抗原に対する特異的IgEの産生(感作)に起因する即時型アレルギーである。近年、食物アレルギーにおける経皮感作の重要性が指摘されているが、その制御メカニズムには謎が多い。これまでに、申請者は、腹腔感作による食物アレルギーにおいて、腸管マスト細胞の受容体CD300fが高親和性IgE受容体シグナルを抑制して消化器症状を抑えることを示した。他方、ミエロイド系細胞(特に、樹状細胞)に発現するCD300fは特定の経路による感作を制御する可能性が示唆された。そこで、「ミエロイド系細胞のCD300fは経皮感作による食物アレルギーを抑制する」と仮説を立て、本研究ではその立証を試みる。
食物アレルギーは、食物抗原に対する特異的IgEの産生(感作)に起因する即時型アレルギーである。近年、食物アレルギーにおける経皮感作の重要性が指摘されているが、その制御メカニズムには謎が多い。本研究の目的は、マウスモデルの解析により、「ミエロイド系細胞の受容体CD300fは経皮感作による食物アレルギーを抑制する」という仮説を立証することである。tape-strippingした皮膚に対するOVAの塗布を繰り返すと血清OVA特異的IgE値の上昇が認められ、その値は野生型マウスと比較してCD300f欠損マウスで少し高い傾向が認められた。所属リンパ節細胞をOVAで再刺激したときに産生されるTh2サイトカイン量の上昇もCD300f欠損マウスで少し高い傾向が認められた。その後、OVAを経胃管投与すると、野生型マウスと比較してCD300f欠損マウスでは食物アレルギー症状の下痢頻度が多くなった。また、血清OVA特異的IgE値、小腸組織におけるTh2サイトカインのmRNAレベル、小腸マスト細胞の脱顆粒率は高く、また、小腸マスト細胞数も多かった。従って、CD300fは皮膚感作及び感作後の抗原摂取による食物アレルギーの進展を抑えると考えられた。また、マスト細胞特異的にCD300fを欠損したマウスではコントロールマウスと比較して、tape-stripping後のOVA塗布による血清OVA特異的IgE値上昇や所属リンパ節細胞のOVA刺激に対する応答性に差はなかった。樹状細胞細胞特異的にCD300fを欠損したマウスでは血清OVA特異的IgE値や所属リンパ節細胞のOVA刺激に対するTh2サイトカイン産生が少し亢進する傾向が認められた。従って、このモデルで皮膚の樹状細胞のCD300fは経皮感作を抑制する可能性が示唆されたが、その分子機序は不明であり、引き続き解析が必要である。
2: おおむね順調に進展している
ミエロイド系細胞に発現するCD300fが経皮感作による食物アレルギーを抑制することが示されたので、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
今後、異なる経皮感作モデルも施行して、ミエロイド系細胞に発現するCD300fが経皮感作と食物アレルギーをどのように制御するかを詳細に解析する予定である。
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