研究課題/領域番号 |
22K15992
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
野阪 拓人 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (70748441)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肝細胞がん / エイコサノイド / 腫瘍関連マクロファージ / 5-LOX / 免疫微小環境 / がん免疫微小環境 / 免疫療法 |
研究開始時の研究の概要 |
肝がん免疫療法において免疫微小環境は治療応答性に関わるため、免疫制御機構の解明と治療法の開発が課題である。本研究では肝がん微小環境におけるエイコサノイドの作用の解明と、免疫療法に対するエイコサノイド産生制御薬のアジュバント効果の検証を目的とする。エイコサノイドを標的とした肝がん免疫環境の制御が確立されれば、免疫療法の新規治療展開として期待される。
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研究実績の概要 |
肝がん免疫療法において免疫微小環境は治療応答性に関わるため、免疫制御機構の解明と治療法の開発が課題である。研究代表者らは、アラキドン酸から生合成される生理活性脂質(エイコサノイド)が、肝がん転移肺内の免疫細胞より産生され、がんを進展させる機構を報告した。一方、エイコサノイドは免疫環境を制御する分子として注目されている。本研究では肝がん微小環境における生理活性脂質(エイコサノイド)の作用の解明と、免疫療法に対するエイコサノイド産生制御薬のアジュバント効果の検証を行い、新規治療展開の確立を目指している。 2022年度(初年度)には、肝細胞がん患者手術標本および、肝細胞がんマウスモデルを用いた検討により、① CD163陽性腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophage:TAM)が5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)を発現し、ロイコトリエン(LT)を産生すること。② LTが肝癌細胞のERK1/2のリン酸化や幹細胞関連遺伝子(POU5F1、c-MYCなど)の発現上昇を介して、肝癌細胞の増殖活性や幹細胞能を亢進させることを明らかとした。すなわち、免疫細胞由来のエイコサノイドによる直接的作用することによる癌進展機序を明らかにし、Biomedicine & pharmacotherapyに報告した。 エイコサノイドはがん微小環境を構成する多くの免疫細胞・間質細胞の動態や機能に対し作用しうるが、統合的な解析はなされていない。現在、肝がん組織標本における、腫瘍内免疫細胞の局在と細胞数を解析し、エイコサノイド関連酵素である5-LOX、COXの発現との関連性を検討している。免疫微小環境におけるエイコサノイドの新規作用や、免疫細胞間ネットワークの解明することにより、肝癌治療における新規治療アプローチにつながることが推察され、独自性と臨床的意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、肝がん組織標本における多重免疫組織化学染色を用いて、腫瘍内免疫細胞の局在と細胞数を解析し、データを蓄積している。現在までに、手術標本の5-LOX陽性細胞数と制御性T細胞数に正の相関傾向があることを確認している。肝細胞がん肝内転移マウスモデルを用いて、エイコサノイド産生抑制による腫瘍進展抑制効果について検討・解析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
肝細胞がん患者手術標本および、肝細胞がんマウスモデル、In vitro assayで確認された研究結果をもとに、TAMがLTを産生し、がん細胞の幹細胞能と増殖能を直接的に活性化させる、がん進展機序を報告した。今後、肝がん組織標本における腫瘍内免疫細胞の局在と細胞数を解析をさらに追加すること、そして、ホルマリン固定パラフィン包埋標本の腫瘍部からRNAを抽出し、次世代シーケンサー(MiSeq; Illumina)を用いて、がん・免疫関連ターゲットRNAシーケンスを行うことを予定している。
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