研究課題/領域番号 |
22K16000
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山崎 明 熊本大学, 病院, 特任助教 (50870945)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | Cell-free DNA / 食道扁平上皮癌 / 化学放射線療法 / 治療効果予測 / ナノ多孔質ガラスデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
食道扁平上皮癌に対する化学放射線療法(Chemoradiotherapy;CRT)は完全奏功率(complete response;CR)が十分でなく、CR後もしばしば再発をきたす。本研究では (1) CRT前と開始後早期の血液/生検材料を用いて奏功群、非奏功群に特有な遺伝子変異の変化を網羅的に探索する。(2)新規に開発したナノ多孔質ガラスデバイスを用いて、治療後の血漿中エクソソーム・Cell-free DNAの遺伝子変異パターンを検討し、リキッドバイオプシーを用いたCRT後の早期効果予測可能なバイオマーカーの同定を目指す。本研究の成果は食道扁平上皮癌の適切な治療選択の決定に貢献できる。
|
研究実績の概要 |
本研究は、食道扁平上皮癌に対する化学療法、化学放射線療法(Chemoradiotherapy;CRT)における効果予測因子の同定と臨床応用を目的とする研究である。具体的には、CRT前とCRT開始後早期の血液検体/食道癌生検組織を用いて癌関連遺伝子の変異を包括的に探索し、奏功群、非奏功群に特有な遺伝子変異のパターンを同定する。引き続き、新規に開発したナノ多孔質ガラスデバイスを用いて、治療後の血漿中エクソソーム・Cell-free DNAの遺伝子変異パターンを検討し、リキッドバイオプシーを用いたCRT後の早期効果予測可能なバイオマーカーの同定を目指す。 2021年5月~2022年6月にかけて食道扁平上皮癌(cStageⅡ~Ⅳa)に対して術前化学療法および術前CRT・根治的CRTが行われた18症例を対象とし、治療開始前・化学療法1コース終了後・RT40Gy照射後・治療終了後・再発症例は再発時に血液検査を行い、検体の採取・保存を行った。患者血清から回収されたエクソソームに結合するcfDNAの断片化の状態を、高感度電気泳動システムを用い解析したところ、血清から回収したcfDNAでは、断片化のピークがいわゆる”Nucleosome-guided Fragmentation Pattern”に類似していたが、ナノ多孔質ガラスデバイスを用いて回収したcfDNAではそのピークが異なっており、癌特有の変異を反映したcfDNA断片化パターンを見ている可能性があった。このことは、ナノ多孔質ガラスデバイスにより回収したエクソソーム結合cfDNAが血清中のcfDNAのうち、癌細胞由来のものを多く含んでいる可能性を示唆していると考えられた。 現在、並行して、血清中のエクソソーム由来のマイクロRNAならびに食道がん組織中のマイクロRNAを解析することで、食道扁平上皮癌CRTの効果予測への応用に結びつけることを目指し、新規バイオマーカーの開発に向け、いくつかの知見が得られている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年5月~2022年6月にかけて食道扁平上皮癌(cStageⅡ~Ⅳa)に対して術前化学療法および術前CRT・根治的CRTが行われた18症例を対象とし、治療開始前・化学療法1コース終了後・RT40Gy照射後・治療終了後・再発症例は再発時に血液検査を行い、検体の採取・保存を行った。現在、ナノ多孔質ガラスデバイスを用いて、患者血清から回収されたエクソソームに結合するcfDNAの定量化を試みている段階であるが、当初の想定よりも定量化できるcfDNAの量が少なかった。 そこで、血清エクソソーム中のマイクロRNAに焦点をあて、目的が達成できないかの検討を行った。 予備的検討として、胆膵癌患者の血清中のエクソソームを回収し、対象群とくらべて担癌群にて発現上昇する特定のマイクロRNAを複数同定した。 また、食道がんに関しても、表在がんのがん部、隣接する正常食道粘膜をそれぞれ16検体採取し、RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、がん部にて上昇する遺伝子、マイクロRNAを複数同定した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、①癌関連遺伝子変異の検索を行った後、得られたDNAに対し、癌に関連する409遺伝子の全エクソンをカバーするキャンサーパネルを用いたターゲットシークエンスを低コスト高深度に行い癌組織の体細胞遺伝子変異を抽出する。具体的にはイルミナ社 Comprehensive Cancer Panelを用いてライブラリー調整を行い、当大学医学部総合研究施設の次世代シークエンサーMiSeqを用いて、ターゲットとなる変異を検索する。さらに、②食道扁平上皮癌公開データベースおよび癌関連遺伝子変異統合データを活用し、上記で得られた結果と統合し、CRTの治療効果判定に有用な遺伝子変異候補を絞り込む予定である。その後、CRTの効果と関連する変異遺伝子候補の抽出を行う。具体的には、臨床経過から奏功群および非奏功群に分類し、各群における特異的な遺伝子変異パターンを探索する。①、②の結果から選ばれた変異を来す遺伝子のうち、奏功群、非奏功群と関連のあるものを多変量解析結果に基づき絞り込み、候補遺伝子を抽出する。 ナノ多孔質ガラスデバイスを用いたエクソソーム結合cfDNAの回収に関しては、現在Wash Bufferなどの調整・最適化が進んでおり、回収量の増加が見込まれている。 また、血清エクソソームに付随するマイクロRNAの解析も並行して進め、食道扁平上皮癌CRTの効果予測のための新規血液バイオマーカーの開発を目指す。
|