研究課題/領域番号 |
22K16010
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
林 明宏 旭川医科大学, 医学部, 客員助教 (30459573)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 遺伝子変異 / デジタルPCR / 膵癌 / 胆道癌 / ゲノム診断 / 膵胆道癌 |
研究開始時の研究の概要 |
膵胆道系腫瘍の確定診断における細胞・組織診では、検体不適正(insufficient material)と判定される場合が少なくない。その原因は、採取可能な細胞・組織量が少ないことに起因するが、微量検体における診断上の問題を克服するため、ごく少数の癌細胞のもつ遺伝子異常を高感度検出する「デジタル細胞・組織診」を提案する。
|
研究実績の概要 |
膵胆道系腫瘍の確定診断における細胞・組織診において、採取可能な細胞・組織量が少ないために検体不適正(insufficient material)と判定される場合がある。本研究では、膵腫瘍患者を対象に、実地臨床で適確・迅速・安価に運用可能なPCR遺伝子診断システムの構築を目的とする。先行研究で、生検等の生体試料から核酸精製行程をスキップし、微量核酸の絶対定量が可能なデジタルPCR装置を用い液滴への核酸封入によるKRAS変異の有無を簡易検出する方法を開発した(Water-burst法:特願20-192P)。2022年度は本法を改良し、蛍光強度を二次元に表示することでKRASのコドン12変異のうち頻度の高い3種類 (G12D, G12V, G12R)とGNASのコドン201変異2種類 (R201H, R201C) を合わせた5種類のマルチプレックス検出系、加えてKRASコドン12/13に関する頻度の低い5種類 (G12C, G13Dなど)を組み合わせたマルチプレックス検出系の2種類の多重解析技術を構築した。さらに複数のドライバー変異のhotspot変異検出のため領域特異的増幅(ターゲットエンリッチメント)は可能かを検証した結果、膵腫瘍疑いの患者から採取した生検検体等を試料に1ng以下の微量核酸においてもKRAS及びGNAS変異の同時検出と変異タイプの特定が可能なことが確認できた(J Mol Diagn 2023, in press)。2023年度は、反応系を高速化するためSso7d融合ポリメラーゼ等の酵素や反応パラメーターの見直しを行うと共に、癌抑制遺伝子を同時に検出可能な系へと発展させたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは、KRASなどの特定のがん関連遺伝子を標的に、1回の反応で複数の重要なhotspot変異を迅速にスクリーニングできるように設計された市販のデジタルPCR用のマルチスクリーニングキットを使用していた。このため、変異タイプの特定ができなかった。マルチプレックス法の検証により、この問題は解決できた。さらにターゲットエンリッチメントの最適化により、わずか40pgのDNAからKRASコドン12/13,61、そしてGNASのコドン201の広い変異種を検出することが可能となり、膵切除組織から得られた微量なFNA組織や、生検針の洗い液に含まれる試料などを用いた変異同定に成功した。 しかし、流通している標準的なドロップレット方式のデジタルPCRシステムでは、FAMとHEX(またはVIC)という2波長の蛍光を別々に検出して各々変異及び野生型のDNA検出を行う原理であるため、同時検出できる変異タイプには数的制限がある。従って、複数遺伝子の多岐にわたる変異タイプを特定するためには、現状ではターゲットエンリッチメント後に複数の反応系へ分割する必要があり、試料採取現場で実施可能なオンサイト検査法とするには、turn around timeを含む課題がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、反応系を高速化するためSso7d融合ポリメラーゼ等の酵素や反応パラメーターの見直しを行う。先行研究で核酸精製を行わずに微量な生体試料のデジタルPCR解析を行うWater-burst法を開発したが、未精製のcrude DNAをテンプレートとすることによる非特異反応が危惧される。このため、RNA-DNA hybrid primer(rhAmp primer;ランプ法)を用い系の改良を試みる。また、所属する研究チームでは、6色の蛍光検出が可能なデジタルPCR装置(Bio-Rad社:QX600 Droplet Digital PCRシステム)を導入したため、癌抑制遺伝子を同時に検出できる系の構築にもチャレンジしたい。
|