研究課題
若手研究
胆道癌は、癌関連死亡の第7位と増加傾向にある。PARP阻害剤は、BRCA1/2に代表されるDNA2本鎖切断修復機能を持つ遺伝子に変異のある癌腫(BRCAness)に対し、合成致死を引き起こすことで、抗腫瘍効果を示すことが知られている。大規模データベース解析において胆道癌では、約70%においてはPARP阻害剤の効果が期待できない。近年、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤がエピジェネティックにBRCAnessを誘導する可能性が報告された。そこで本研究では、エピジェネティックなメカニズムでDNA損傷修復過程を抑制することにより、胆道癌に対するPARP阻害剤による新規合成致死療法の開発を目指す。
胆道癌細胞株を用いて、各種PARP阻害剤による、細胞増殖抑制効果をしらべたところ、増殖抑制効果が高い細胞株と低い細胞株があることがわかった。それらの細胞株を用いて、相同組換えの程度を調べたところ、PAPR阻害剤の感受性が高い細胞株で、相同組換えの程度が高く、感受性が低い細胞株で低いことが明らかになった。そこで、DNAメチル化阻害剤であるAzacitidine、Decitabineを用いて、相同組換えの程度が抑制されるかどうか調べたところ、用量依存的に抑制効果があることがわかった。なお、胆道癌細胞株のベースラインでの、DNAメチル化の程度に有意差は認められなかった。PARP阻害剤に耐性を示した細胞株に対し、PARP阻害剤単剤、DNAメチル化酵素阻害剤単剤、および両者を用いて、細胞増殖抑制効果を見たところ、両者を用いた群において、おのおのの単剤群と比較して、増殖抑制効果が有意差をもって、増強していた。つまり、DNAメチル化阻害剤により、相同組換えがEpigeneticに抑制され、PARP阻害剤に対して、感受性を示すようになったと考えられる。いっぽう、PAPR阻害剤に感受性を示し、相同組換えが減弱している細胞株を用い、PAPR阻害剤を用いて、耐性化させ、単クローン化した細胞を作成した。PAPR阻害剤耐性株は、PAPR阻害剤に対する、細胞増殖抑制効果が親株と比較し減弱しており、また、相同組換えの程度が、親株と比較して増強していた。
2: おおむね順調に進展している
DNAメチル化酵素阻害により、PAPR阻害剤の薬剤感受性増強が確認できたため。
耐性株を用いて同様の解析を行う。メカニズムの解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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