研究課題/領域番号 |
22K16062
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小松 雄樹 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80836958)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 心室頻拍 / カテーテルアブレーション |
研究開始時の研究の概要 |
致死性不整脈である心室頻拍に対してカテーテルアブレーション治療が行われるが、心室頻拍が発生し維持される機序や、アブレーションの標的となる心筋の瘢痕組織内の不整脈基質の電気生理学的特徴が十分に解明されていないため、その手法は未だ確立されていない。我々は近年、洞調律中に旋回する興奮伝播様式(rotational activation pattern [RAP])を呈する部位が心筋の機能的伝導障害部位であることを報告した。本研究では、RAPに注目して心室頻拍の機序を解明し、『RAPが至適アブレーション部位である』という仮説を検証することにより、最適な治療方法を確立する。
|
研究実績の概要 |
器質的心疾患の瘢痕組織に関連する心室頻拍が発症し、リエントリーが維持されるために必須となるのは緩徐伝導部位である。心室頻拍に対するカテーテルアブレーション治療において、頻拍を誘発せずにアブレーション部位を同定する手法を確立することが非常に重要であり術後成績に大きく関与する。本研究は、最適なアブレーション部位やアブレーション手法を確立するために、基本調律中に評価した不整脈基質と心室頻拍回路の関連を詳細に検討する。基本調律中に瘢痕組織内で緩徐に伝導する部位や伝導ブロックを呈する部位が心室頻拍の頻拍回路に関連すると考えられているが、我々は伝導ブロックライン端に旋回興奮伝播様式(rotational activation pattern, RAP)を呈する部位が,心室頻拍回路の関与部位としてより特異的に機能していることを報告した(Hattori M et al. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2022 Jan;15(1):e010308)。実際のアブレーション治療において、3次元マッピングシステムを使用してRAPを同定するために、適切なマッピング手法を決定すること、またRAPを標的としたアブレーション手法の安全性や有効性を明らかにすることは、大きな臨床的意義がある。本研究の最終的な目標は、有効で安全なカテーテルアブレーション治療の手法を確立することである。さらに、致死性不整脈である心室頻拍のメカニズムを解明することで、アブレーションの至適ターゲットを同定することが可能となり、今後の心室頻拍のカテーテル治療成績の向上に大きく貢献できると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAPを呈する部位は洞調律中に必ずしも存在するわけではなく、右室もしくは左室からのペーシングにより明らかになる症例も存在し、不整脈基質マッピングにおいてVT関与部位を特定するための最適な調律は明らかにされていなかった。我々は洞調律中、右心室ペース中、左心室ペース中の不整脈基質マッピングにおける伝導ブロックライン周囲に生じる RAPの有無を調査し、不整脈基質を特定するための最適の調律を調査した。その結果、瘢痕関連寝室頻拍に対する不整脈基質マッピングにおける最適な調律は、関心領域を含む瘢痕組織の解剖学的位置に大きく影響を受けることが解明された。瘢痕部近傍からのペーシングによるマッピングが、心室頻拍回路に関与する伝導ブロックおよびRAPを同定するために効果的であることを報告した(Shinoda Y, Komatsu Y, et al. Heart Rhythm. 2024 Mar 1:S1547-5271(24)00232-7. doi: 10.1016/j.hrthm.2024.02.060.)。RAPを標的としたカテーテルアブレーション治療の安全性や有効性に関して検証するために、現在さらに症例を蓄積しているが、心室頻拍に対する当院のカテーテルアブレーション症例数の減少により、当初の目標症例数には達しない可能性がある。しかし、RAPを標的としたアブレーションを施行し、蓄積した症例をもとに、研究の主要アウトカムであるアブレーション後の心室頻拍抑制率や、副次アウトカムの心血管死亡率や有害事象につき解析することができると考えており、2024年度に報告予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きRAPに注目し標的としたマッピングとアブレーションを前向きに行なっていき症例を蓄積し、解析を行なっていく。また、これまで蓄積した症例の術後観察期間であり、データ収集および解析を行い、結果を報告予定である。また、心室頻拍のメカニズム解明に繋がる研究として、心室期外収縮中のマッピングも行う手法を考案している。RAPは瘢痕組織内に存在する心筋の伝導ブロックの端に存在し、非常に遅い伝導速度で旋回する興奮パターンが非常に特徴的であるが、実際に心室頻拍のリエントリー回路とどのように関連しているかは不明である。RAPを呈する部位は心室期外収縮時に通常の基本調律中よりもさらに伝導遅延をきたす、あるいは伝導ブロックを認める部位となり、頻拍のメカニズムであるリエントリーの発生に関与している可能性が考えられる。したがって、基本調律中のマッピングのみでなく、心室期外収縮中のマッピングも行うことは、心室頻拍が生じるメカニズム解明のための重要な検証である。現在データ収集および解析中であり、2024年度に結果を報告予定である。
|