研究課題/領域番号 |
22K16064
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
常盤 洋之 東京大学, 医学部附属病院, 届出診療員 (30834197)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / エストロゲン / non-genomic pathway / 肺高血圧 |
研究開始時の研究の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は詳細な病態が未解明の難治性疾患であり、新たな病態制御機構の解明が望まれる。性ホルモンであるエストロゲンはPAHの病態制御に関与することが知られているが、その効果は報告ごとに相違がある。これはエストロゲンが多様な生理作用を有することが一因であり、その全容解明には様々な視点から作用機序を分類し評価することが必要である。本研究ではエストロゲンの持つ体血管保護作用において近年重要性が見いだされつつある非ゲノム経路(non-genomic pathway)に着目し、同経路のPAHにおける機能の同定を通じ、エストロゲンの病態制御機構の解明に資する新たな知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
我々は肺動脈性肺高血圧症(PAH)におけるエストロゲンのnon-genomic pathwayの機能を同定するため、ERαの non-genomic pathwayの機能を全身で障害した遺伝子改変マウス(KRRKI/KIマウス)を用い、PAHにおけるエストロゲンの作用を評価した。VEGFR阻害薬(SU5416)と低酸素により誘導したPAHに対して、野生型雌マウスにおいてはエストロゲンにより肺動脈の中膜肥厚抑制と右室収縮期圧の低下が認められたが、KRRKI/KIマウスではこれらの作用が消失した。このことからエストロゲンのPAH抑制効果について、ERα non-genomic pathwayが重要な役割を担うことが示唆された。さらにこの血管保護作用について詳細な機序を検証するため、我々は細胞種特異的にERα のnon-genomic pathwayが障害された別の遺伝子改変マウスを作成した。エストロゲンの血管保護作用として、血管生理機能の重要な制御因子である一酸化窒素(NO)の産生亢進や機械的障害に対する血管への炎症細胞集簇抑制と新生内膜過形成の抑制があるが、我々は上記マウスを用いてこれらの作用の発現に血管内皮細胞におけるERα non-genomic pathwayが必要であることを明らかにし、論文として報告した。(JACC Basic Transl Sci. 2022 8(1): 55-67.) 現在は同マウスや細胞種特異的なERα knockout マウスを用い、PAHにおいてERα non-genomic pathwayが特に重要な役割を果たす細胞種を特定するとともに、KRRKI/KIマウスから単離培養した肺動脈平滑筋細胞や肺動脈内皮細胞を用いて、ERα non-genomic pathwayがそれらの細胞種に及ぼす影響とその作用機序について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本研究に必要な遺伝子改変マウス(細胞種特異的ERα non-genomic pathway障害マウス)を作成し、その心血管系における表現型についての解析を学術雑誌に報告することができた。またマウスからの肺動脈平滑筋細胞、肺動脈内皮細胞の単離培養について、高純度かつ良好な増殖を示す培養環境を得るために一定の条件検討を要したが、安定した実験系の構築が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
PAHにおけるエストロゲンのnon-genomic pathwayを介した肺動脈中膜肥厚抑制作用について、単離培養細胞を用いた実験系を通じてその詳細な病態解明を進める。またnon-genomic pathwayの選択的刺激によりPAHの発症予防や既に誘導されたPAHの治療が可能であるかについても評価を行い、新規治療法としての有用性を検証する。
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