研究課題
若手研究
本研究では、(1)未分化抗原特異的CAR-T細胞がヒトiPS細胞由来の各種分化細胞には作用せず、残存未分化幹細胞のみに作用することの確認、(2)既に形成されたヒトiPS細胞由来奇形腫をCAR-T細胞療法により除去できるかの評価、さらに(3)ヒトiPS細胞由来分化細胞から発生した腫瘍(非奇形腫が主)をCAR-T細胞療法により除去できるかの評価を達成することを目標とする。
予備研究において、未分化細胞特異的抗原遺伝子の候補として、奇形腫およびiPS細胞のRNAsequence解析によるスクリーニングを行い、肝細胞癌に特異的に発現する胎児性抗原のグリピカン3(GPC3)を見いだした。誘導したGPC3特異的細胞傷害性T細胞の評価の結果、iPS細胞に対して細胞障害性が限定的であること、またHLA拘束性があることから、さらなる免疫効果増強のため、GPC3に対するモノクロ抗体を作製し、これを利用したCAR-T療法の開発を開始した。まず、複数のiPS細胞株と、iPS細胞から分化細胞を樹立し、GPC3の発現解析を行ったところ、分化心筋細胞においてはGPC3の発現が低いことを確認した。樹立したGPC特異的CAR-T細胞により、未分化細胞には細胞傷害能を示すが、移植に用いるiPS細胞由来心筋細胞に対しては細胞傷害能を示さないことを確認した(特許出願済)。すなわちGPC3を標的として、移植時の残存未分化細胞を特異的に除去できる可能性が示唆された。次にGPC3特異的CAR-T療法による、実際の奇形腫形成抑制効果および副作用の有無をin vivoマウスモデルで確認した。iPS細胞を免疫不全マウスに移植し、奇形腫を形成させ、奇形腫におけるGPC3の発現を確認したところ、未分化状態と比較しても十分に高発現していること、さらに樹立したGPC3特異的CAR-T細胞を投与することで、一旦形成された奇形腫が縮小することを確認した。すなわちiPS細胞由来の奇形腫に対して、GPC3特異的CAR-T細胞が一定の治療効果を示すことをマウスモデルを用いて確認した。以上により、GPC3特異的CAR-T細胞を用いたiPS細胞由来奇形腫の治療法を確立し、最終的にはヒトへの応用へ向けた検証データの構築を目指している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件)
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