研究課題/領域番号 |
22K16084
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
近田 雄一 順天堂大学, 医学部, 助教 (60910734)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | microRNA / HDL-C / 不安定プラーク / 冠動脈疾患 / HDL / mi-RNA |
研究開始時の研究の概要 |
冠動脈疾患の最も重要なリスクの一つがLDLコレステロール(LDL-C)で、予後改善のためにスタチンなどで低値に抑制することが推奨されている。しかし、LDL-Cのみをコントロールしても、動脈硬化進行やプラーク不安定化のリスクは完全に抑制できない。本研究では、LDL-C以外の残余リスクのうち、HDLの機能(動脈硬化組織でマクロファージが貪食したコレステロールを引き抜く能力)に注目し、冠動脈疾患症例において、HDL-miRNAによって引き起こされるHDLの機能低下が、冠動脈プラークの不安定化を招き、予後の悪化につながるという仮説を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、LDL-C以外の残余リスクのうち、HDLの機能(動脈硬化組織でマクロファージが貪食したコレステロールを引き抜く能力)に注目する。microRNA (miRNA)は21-25塩基長の1本鎖RNA分子であり、遺伝子の転写後発現調節に関わり、動脈硬化を含む広範な生物学的プロセスを担っている。さらに、HDLの上にもmiRNA (HDL-miRNA)が存在し、HDL-Cと血管内皮細胞とのやり取りの中で、抗動脈硬化作用を発現していること示唆されている。研究代表者はこれまでに、miR-1914-3pが、心血管死亡リスク上昇に影響を与えている可能性を示している。そこで本研究計画では先行研究をさらに発展させ、冠動脈疾患症例において、HDL-miRNAによって引き起こされるHDLの機能低下が、冠動脈プラークの不安定化を招き、予後の悪化につながるという仮説を検討している。2023年度は、PCIレジストリから、NIRS-IVUSを用いた症例で、責任病変に不安定プラークを認めた症例(maxLCBI4mm>400)を無作為に抽出(n=10)、それに年齢・性別・LDL-C値を一致させた、不安定プラークを認めなかった症例(maxLCBI4mm<400)を1:1で無作為に抽出した(n=10)。さらに、上記で抽出された症例の凍結保存血漿からApoA1レジンカラム(Academy Biomedical 社、Goat Anti-Human Apolipoprotein AI Sepharose 4B Gel )を用いてHDLを単離した。HDL上のmiR-1914-3pを、mirVana PARIS Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて単離、その発現量をTaqMan MicroRNA Assays (Thermo Fischer Scientific)を用いた定量化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画では1) HDL機能を制御するHDL-miRNAの同定、2) HDL-miRNAおよびHDL機能と冠動脈不安定プラークの関係、3) HDL-miRNAおよびHDL機能の予後へ与える影響 の3点を明らかにする。 2023年度は、PCIレジストリから、NIRS-IVUSを用いた症例で、責任病変に不安定プラークを認めた症例(maxLCBI4mm>400)を無作為に抽出(n=10)、それに年齢・性別・LDL-C値を一致させた、不安定プラークを認めなかった症例(maxLCBI4mm<400)を1:1で無作為に抽出した(n=10)。さらに、上記で抽出された症例の凍結保存血漿からApoA1レジンカラム(Academy Biomedical 社、Goat Anti-Human Apolipoprotein AI Sepharose 4B Gel )を用いてHDLを単離した。HDL上のmiR-1914-3pを、 mirVana PARIS Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて単離、その発現量をTaqMan MicroRNA Assays (Thermo Fischer Scientific)を用いて定量化しつつあるが、検体によっては、十分な発現量を得られない場合もあった。そのため、現時点では、NIRS-IVUSで得られた各臨床パラメーターとmiR-1914-3pの間に明らかな相関性は認めていない。そのため、引き続き症例数を増やす必要があり、またmiR-1914-3p以外のHDL-miRNAの測定も検討しており、進捗状況はやや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、miR-1914-3p以外のHDL-miRNA (miR-126, -223, -92a, -92bなど)の測定を併せて行う予定である。更にマクロファージ様細胞(THP-1またはJ774細胞)を放射性同位体標識したコレステロールを含む培養液で培養し上記で単離したHDLを加え、さらに培養した後、培養上清中および細胞中の放射活性を測定し、総放射活性に対する培養上清中の放射活性の割合 (%) をHDLのコレステロール引き抜き能(CEC)として求める。また、HDL-miRNAをトランスフェクトしたTHP-1またはJ774細胞を用い、CECを測定しHDL-miRNAとHDL機能の関係を検証する。これらの研究で得られた結果をmaxLCBI4mm高値群・低値群、心血管イベントあり群・なし群、で比較し、臨床的な病勢・予後を反映するバイオマーカーとなりうるHDL-miRNAを同定する。HDL-miRNAのHDL機能への関与およびバイオマーカーとしての有用性については十分に検討されていない。そのため、本研究計画で得られる成果は全く新しい知見であり、臨床的意義は大きいと考えられる。
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