研究課題/領域番号 |
22K16096
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武城 怜史 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (20931827)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 低炭水化物食 / 植物性脂質 / 心不全 / PPARα |
研究開始時の研究の概要 |
現在、心不全に対する根本的治療法はなく、その発症および進展抑制が喫緊の課題である。しかし、いまだ心不全予防に適した食事は確立されていない。近年、心疾患危険因子を改善する低炭水化物食が注目されている。さらに、心血管系への効果に炭水化物の代わりに摂取する脂質の質が重要であり、高植物性脂質食で心血管死が減少することが大規模臨床試験で報告された。その詳細な機序は明らかではなく、本研究では「高植物性脂質食が心不全予防・治療食になりうるか」を分子生物学的手法を用いて解明し、心不全の新しい食事療法の基盤となる科学的根拠を確立する。
|
研究実績の概要 |
心不全発症の危険因子となる生活習慣病に対する予防医療が重要であり、特に毎日の生活で欠くことのできない食事の影響は大きい。しかし、いまだ心不全予防に適した食事は確立されていない。近年、心疾患危険因子を改善する低炭水化物食(Low carbohydrate diet: LCD)が注目されている。LCDの心血管系への効果に炭水化物の代わりに摂取する脂質の質が重要であり、心血管死は高動物性脂質LCDで増加し、高植物性脂質LCDで減少することが大規模臨床試験で報告されている。その詳細な機序は明らかではなく、本研究はLCDを構成する脂質の差異が心不全に与える影響を解明することを目的としている。 申請者は圧負荷心不全モデルマウスを用いて、高動物性脂質LCDが心機能を増悪すること、高植物性脂質LCDが心機能を改善することを確認した。次に、マウス心臓のトランスクリプトーム解析を行い、高植物性脂質LCDが心臓エネルギー代謝と炎症を制御する転写因子PPARαを活性化することを見いだした。さらに、心筋細胞特異的PPARαノックアウトマウスとPPARα活性化薬であるペマフィブラートを用いて、PPARαが心不全の抑制および改善に重要な因子であることを証明した。最後に、食餌・血清・心臓の脂肪酸組成解析および培養心筋細胞を用いて、高植物性脂質LCDに多く含まれるステアリン酸が心筋細胞の転写因子PPARαを活性化し、心保護効果を発揮することを見いだした。これらの成果に関して、学会発表および論文発表(DOI: 10.1038/s41598-023-30821-7)を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、高植物性脂質LCDとPPARαの心臓代謝への影響と心保護効果の機序を明らかにすることを挙げていた。予定通り、心筋細胞特異的PPARαノックアウトマウスやPPARα活性化薬ペマフィブラート、ラット新生仔培養心筋細胞を用いて各実験を遂行した。高植物性脂質LCDに多く含まれるステアリン酸が心筋細胞の転写因子PPARαを活性化し、心保護効果を発揮することを見いだし、迅速に論文発表を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き高植物性脂質LCDとPPARαの心臓代謝への影響を探索するため、エネルギー代謝に着目し、予定していた核医学実験などを進める。また、ステアリン酸には炎症抑制やミトコンドリア機能改善の効果が報告されており、ステアリン酸による心臓脂質構成と心機能への影響も探索する。
|