研究課題
若手研究
核膜蛋白異常が原因となる遺伝性疾患は「核膜病」と総称され若年突然死を中心とした心臓・骨格筋に特異的な表現型を示す。しかし核膜に蓄積した変異蛋白が引き起こす核内シグナル、転写環境の変化とその病態意義については未解明である。本研究では、ヒト臨床で単離した遺伝性心筋症から核膜蛋白を原因遺伝子として同定し、 症例より樹立した疾患iPS細胞、および遺伝子改変動物モデルから、同定遺伝子TMEM43変異蛋白の生化学的解析、相互作用蛋白の同定、分子細胞機能解析、生体心臓組織を用いたトランスクリプトーム解析、それ等の情報と統合した横断オミックス解析を行うこ とで、核膜病の治療につながる分子標的の探索を行う。
本研究では、遺伝性心筋症家系から同定されたTMEM43 S358L変異を基に、患者と同一の変異を持つTMEM43-S358Lノックインラット(以下、KIラット)と患者由来のヒトiPS心筋細胞を用いて、TMEM43変異蛋白の生化学的特性及び病態機序の解明を行った。KIラット及び患者細胞においては、特に小胞体ストレスを課した際にTMEM43蛋白の糖鎖修飾の付加や小胞体膜から核膜への局在変化が観察され、これらが心筋症の発症に関与している可能性が示唆された。また、KIラットの心臓組織の遺伝子発現解析から、TMEM43変異が不整脈を引き起こす原因の一端を明らかにした。
本研究では、遺伝性心筋症を引き起こすTMEM43変異蛋白の特異的な生化学的変化及びこれが心筋症の発症機序にどのように関与しているかを明らかにした。特に、小胞体ストレス下での変異蛋白の糖鎖修飾付加と細胞内局在変化が心筋症発症に重要であることを明らかにした。これらの結果は、他の遺伝的心疾患における病態機序の解明にも応用可能な可能性があり、広範な心血管疾患の病態解明研究に影響を与えることが期待される。さらに、これらの知見は、心筋症の早期診断や新たな治療標的の開発に貢献し、遺伝的要因に基づく心疾患の理解を深め、将来的には個別化医療の実現に寄与することにもつながる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 13 号: 1
10.1038/s41598-023-46915-1