研究課題/領域番号 |
22K16130
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沼田 玄理 東京大学, アイソトープ総合センター, 特任助教 (20834188)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肺高血圧 / 肺動脈性肺高血圧 / 強皮症肺高血圧 / 内皮間葉転換 / レチノイド |
研究開始時の研究の概要 |
肺高血圧症(PH)は内皮細胞や平滑筋細胞の異常増殖および内皮細胞の平滑筋細胞への転化(EndMT)を背景とした肺血管リモデリングによって生じる予後不良な難治性疾患である。既存治療薬では肺水腫等の致死的合併症が時に問題になり、肺血管拡張作用の乏しいリモデリング改善薬の開発が望まれている。PHの肺血管リモデリングには核内受容体の関与が示唆されており、本研究では核内受容体シグナルがEndMTと関連してPHリモデリングを改善するかどうかを確認し、関連したPHのメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
(背景・目的) 肺高血圧症(PH)は肺血管リモデリングを特徴とする難治性疾患であり、種々の肺血管拡張薬によって予後改善が得られてきたが、現行使用されている血管拡張薬に反応しない患者や血管拡張薬による合併症のために使用困難な患者も存在する。ゆえにPHの新規メカニズムの解明及びそれに基づいた肺血管リモデリング改善を主たる効果とする治療法の開発が望まれている。PHの進展には核内受容体が関与し、レチノイドX受容体α(RXRα)は様々な核内受容体関連シグナルを調節することが知られているが、RXRαとPHとの関連は明らかではない。本研究はRXRαと関連したPHメカニズムの解明および治療方法の開発を目指すものである。 (方法) RNA網羅的解析の公共データを用いてPH患者肺RXRα mRNA発現を解析した。また、肺動脈性PH(PAH)および強皮症PHマウスモデル(SSc-PH)に対するRXRα刺激薬(Acyclic retinoid: ACR)の効果を生理学的、組織学的、分子生物学的手法で検討した。さらにマウス単離肺内皮細胞およびヒト内皮細胞を用い、内皮間葉転換(EndMT)とRXRαの関連を解析した。 (結果・考察) 公共データ解析によりPH患者肺でRXRα mRNAが低下していることが確認された。また、PAHおよびSSc-PHマウスにおいてRXRα刺激薬ACRは肺血管抵抗を改善し、EndMTの抑制および肺血管リバースリモデリングを起こすことが確認された。また単離内皮細胞においてRXRαはp53の活性化を介して間葉内皮転換(MEndT)を誘導した。RXRα刺激薬ACRは肺血管内皮細胞においてp53を介してMEndTを誘導し、マウスPHモデルおよび培養細胞におけるEndMTを改善した。RXRα-p53経路と関連したMEndTによるPHの治療メカニズムに関する報告はこれまでなく、RXRα-p53経路はPHの新規治療標的として期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺高血圧の進展および発症においてレチノイドと関連した新規メカニズムを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
肺高血圧におけるRXRα-p53経路についてさらに詳細に解析し、本経路のさらなる詳細なメカニズムの解明を試み、ヒトへの治療応用へと繋がる病態解明を目指す。
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