研究課題/領域番号 |
22K16167
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
島田 翔 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (10907827)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 慢性緑膿菌感染 / 抗菌物質 / 薬剤耐性菌 / 慢性感染マウスモデル / リゾチーム・キトサン糖複合体 / 慢性緑膿菌感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
生体に安全に使用でき、高い抗菌作用と薬剤耐性(AMR)も誘導しにくい抗菌物質は、慢性緑膿菌感染に対する新しい治療薬として応用できる可能性がある。広域な抗菌作用と低い耐性誘導を示す抗菌素材として、申請者は抗菌ペプチドであるリゾチームと多糖類であるキトサン糖をメイラード反応(アミノ・カルボニル反応)で結合させたリゾチーム・キトサン糖複合体に注目している。今までこの化合物は良好な抗菌作用および低い耐性誘導を示すことが緑膿菌のin vitroの実験系で確認されている。本研究では、この化合物の慢性緑膿菌気道感染の動物モデルに対する効果を明らかにし、治療薬としての実用化の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
令和4年度には、慢性緑膿菌感染モデルとして、感染後の回復期においても肺内に緑膿菌が保持されるマウスモデルを作成した。具体的には、感染後2週間時点で肺内に10^3~10^4 CFU/肺の緑膿菌が検出されることを確認した。また、リゾチーム・キトサン糖複合体(LYZOX)の毒性試験をマウスに対して行い、感染後4日目から3回にわたる隔日投与による影響を体重の変化と肺組織の状態から評価した。1000μg/mlのLYZOXを3回投与しても、体重増加に有意な差は見られず、組織学的にも顕著な気道炎症は確認されなかった。これに基づき、令和5年度には同じ投与スケジュールでLYZOXの投与を継続したが、複数の実験を通じてLYZOX群とPBS投与群との間で肺内菌数に差は見られず、マウス肺内においてLYZOXの抗菌効果は確認されなかった。 in vitroの試験では、微量液体希釈法を用いて緑膿菌の発育抑制を検証し、溶媒として蒸留水を用いた場合にはLYZOXの最小抑制濃度(MIC)が800-1600μg/mlであることを確認した。しかし、生理食塩水やPBSなどの塩を含む溶媒でLYZOXを溶解した場合、抗菌効果が減弱し、特にPAO1株に対しては抗菌活性が示さなかった。これは、抗菌効果を得るためには塩を含まない溶媒を使用する必要があることを示唆しており、上述したマウスモデルにおいても抗菌効果が得られなかった一因と考えられる。今後生体内で安全に使用でき、かつLYZOXの抗菌効果を失わない溶媒の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
慢性緑膿菌マウスモデルに対してはLYZOXを用いた抗菌効果の検証を行なったが、明確な抗菌効果が得られなかった。要因として、生体への毒性を考慮して用いていた生理食塩水やPBSに含まれる塩がLYZOXの抗菌活性を減弱していることが考えられた。塩を含まない溶媒による毒性試験の評価を再度行う必要があるため、マウスモデルの検証は進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスモデルについては、溶媒を変更ののち毒性評価を再度進めていく予定でいる。ただ、塩を含まない蒸留水では浸透圧の影響で高い細胞毒性が予想されるため、細胞毒性が低くLYZOXの抗菌活性を失わない溶媒をまずはin vitroの実験で評価していく必要があると考えている。一方、LYZOXの抗菌薬との併用効果の検証については臨床検体から分離された薬剤耐性菌株の収集が完了したため、令和6年度についてはこれらの菌株を用いて抗菌薬とLYZOXとの併用効果を評価していく。各菌株で感受性の差異が認められた際には薬剤耐性機構と感受性の関連を明らかにするため、各菌株のゲノム解析についても検討していく。
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