研究課題/領域番号 |
22K16178
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋平 順天堂大学, 医学部, 助教 (00926149)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 加熱式タバコ / 慢性閉塞性肺疾患 / 喫煙 / シングルセルRNA-seq / 肺気腫 / シングルセルRNAシークエンス |
研究開始時の研究の概要 |
従来の燃焼式タバコよりも毒性が低いとされる加熱式タバコが急速に普及しているが、健康被害が多数報告され、加熱式タバコの長期使用による生体への影響は将来の臨床的課題として懸念されている。申請者はマウスに加熱式タバコIQOSのエアロゾルを長期曝露した先行研究により、燃焼式タバコと同様の肺気腫が生じること、しかしその発症メカニズムが、IQOSエアロゾルと従来のタバコ煙とで異なる可能性があることを見出している。本研究では、シングルセルRNAシークエンスによる肺組織の解析を行うことで、加熱式タバコによる肺気腫発症メカニズムが従来のタバコとどのように異なるのか新たなエビデンスを提唱することを目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、慢性タバコ煙曝露に関する肺傷害の解析システムを加熱式タバコに応用し、加熱式タバコの長期曝露が生体に与える影響について研究を行ってきた。本邦で最多のシェアをもつIQOSを用いてマウスに6か月の長期曝露を行った結果、IQOSエアロゾルの長期曝露により、燃焼式タバコと同等の肺気腫を生じ、その機序としてアポトーシスが深く関与していることを見出した。そこで、IQOS曝露を行ったマウス肺組織に対してシングルセルRNA-seq解析を行い、肺気腫発症機序をより詳細に分析することを目論み、本研究を実施した。昨年度、6か月間の曝露実験を行った対照群、IQOS群、CS群から1匹ずつ、合計3検体のマウス右全肺をシングルセルRNAシークエンス解析に供し解析を行った結果、31種類のクラスタが同定され、IQOS 群では他の群と比較してnaive CD4 T 細胞, B 細胞, 間質マクロファージの一部の細胞数が増加しており、CS 群では他の群と比較して肺胞マクロファージ, 好中球の細胞数が増加しているという結果を得た。しかし、細胞腫分布を分析した結果、気道上皮細胞など肺組織の構成細胞の絶対数が既報と比較してかなり少ないため、肺組織の分散方法を見直し、まずは先行研究から参照データのある燃焼式タバコ煙曝露肺を用いて、あらためてシングルセルRNAシークエンス解析を実施した。その結果、細胞分画として既報と似た分散を得ることができた。燃焼式タバコ曝露肺組織においては細胞老化が病態に関与することが分かっており、治療ターゲットとなりうることで注目されている。現在、細胞老化に着目し、シングルセル化した肺組織細胞の解析を進めるとともに、IQOS曝露肺においても同様の解析を進めるべく、曝露実験を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス肺組織を用いたシングルセル解析を実施するにあたり、細胞分散の方法を確立するのに時間がかかったこと、その確認のため、現状は従来の燃焼式タバコ曝露肺の解析にとどまっていることから、進捗区分としては上記のように考えている。しかしながら、シングルセル化の方法が確立できたことから、本研究の主目的である加熱式タバコIQOS曝露肺の解析も進めることができるようになっており、今後のデータ集積が期待される段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
マウス肺組織を用いたシングルセル化、細胞分散の方法について確立し、燃焼式タバコ曝露肺については解析を進めており、加熱式タバコについてはエアロゾル曝露実験を実施中であり、サンプルの準備を行っている。燃焼式タバコ曝露肺においては細胞老化にかかわる因子の興味深い結果が得られ始めており、加熱式タバコ曝露肺との相違が臨床像さらに治療戦略に大きな影響を与える可能性があり、その観点でのデータ集積を引き続き行っていく。
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