研究課題/領域番号 |
22K16205
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
内堀 健 公益財団法人がん研究会, 有明病院 呼吸器内科, 医長 (40633053)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | SCLC転化 / EGFR遺伝子変異陽性肺癌 / EGFR-TKI / 小細胞癌転化 |
研究開始時の研究の概要 |
EGFR遺伝子変異陽性肺癌の治療において、EGFR-TKIに対する耐性機構として小細胞癌(SCLC)転化が、耐性症例の5-10%に出現することが知られている。しかし、この耐性に対する最適な治療法が確立していない。本研究は、SCLC転化に関わる神経内分泌マーカーの発現パターンや、EGFR-TKI前後での発現変化を解析し、SCLC転化に関わる責任遺伝子を同定することを目指しており、より効果の高い治療戦略の確立に大きく貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
EGFR変異陽性肺癌において、小細胞癌(SCLC)転化によってEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に耐性を生じた症例の臨床サンプルを用いてRNAseqを行った。ASCL1、NeuroD1、POU2F3などのNEマーカーの発現パターンを解析中であり、標準的なSCLCとの差を評価できることが期待される。また、NEマーカーのパターン解析については、新鮮凍結検体のmRNA解析が標準ではあるが、コンスタントにそのような検体を採取できるとは限らない。ASCL1、NEUROD1などの評価は免疫染色(IHC) でも可能という知見が蓄積されており、RNAseqを行えないサンプルではIHCによる評価を試みる予定であり、解析対象を拡充することが可能と考えられる。SCLC転化の際には、先行研究によるとRB1とTP53の機能喪失が特徴であると理解されてきたため、その点についてもIHC等による評価を組み合わせて検証する。ヒト検体を用いた検討に加えて、EGFR変異肺がんモデルマウスを用いた検討も行った。マウスEGFR-del19変異を発現するマウス肺がん細胞株を用いてCrispr-cas9のシステムにより、RbとTP53のノックアウトを導入した細胞を樹立した。その細胞を同系マウスに移植してEGFR-TKIで治療し、耐性となり再増大してきた腫瘍を取得し、耐性メカニズム解析を進めている。 実臨床においても、EGFR-TKI耐性時にSCLC転化と腺癌のままの細胞が同一領域に混在した症例や、SCLC転化症例に対してプラチナ製剤+ICIを使用した症例をなど経験し、引き続き解析対象を蓄積している。SCLC転化はEGFR-TKI耐性の5-10%で生じるが、細胞生物学的な特徴は十分に解明されておらず、その最適治療が確立していない。以上の結果がその解決に寄与すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①SCLC転化細胞におけるNEマーカーの発現パターン解析:EGFR-TKI耐性時の再生検検体のうちSCLC転化をきたした症例のRNAseqを施行し、結果の解析を行っており、予定通りの進捗と考えられる。 ②SCLC転化前細胞におけるNEマーカー転写パターン解析:NEマーカーのパターン解析については、新鮮凍結検体のmRNA解析が標準ではあるが、転化前の再生検からそのような検体を採取できることは非常にまれである。一方でASCL1、NEUROD1などの評価は免疫染色でも可能という知見が蓄積されており、対象症例において染色作業を検討している。 ③実臨床でSCLC転化した症例をICI治療した例が存在した場合の詳細解析:SCLC転化症例に対してプラチナ製剤+ICIを使用した症例を経験したため、計画の通りその効果を確認することが可能である。 ④EGFR変異肺がんマウスモデルを用いて、RbおよびTP53をノックアウトした細胞株を樹立し、in vivoでのEGFR-TKI耐性腫瘍の取得に成功した。現在そのメカニズムを解析している。
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今後の研究の推進方策 |
SCLC転化細胞、転化前細胞におけるRNAseqやIHCの解析結果を検討したのちには、診断時からSCLCであった症例の検体と比較することを計画している。また、SCLC転化症例に対してプラチナ製剤+ICIを使用した症例を経験したため、その効果を確認するとともにICI開始前に採取された生検検体を用いて腫瘍内T細胞のレパトア解析を試みることを予定している。SCLC転化はEGFR-TKI耐性の5-10%と希少な対象であるため、ひきつづきEGFR-TKIに対して耐性を生じた症例から再生検を施行し、SCLC転化を生じた症例の集積を継続している。また、樹立したRbとTP53を欠損させたmEGFR肺がん細胞を用いて、進行中のEGFR-TKI耐性機構の解析を継続するとともに、SCLC転化に必要な因子の探索も並行して進める。
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