研究課題/領域番号 |
22K16209
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
林 麻子 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10843550)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | カルシニューリン阻害薬 / 腎移植 / CD44 / 巣状分節性糸球体硬化症 / 腎毒性 |
研究開始時の研究の概要 |
カルシニューリン阻害薬は、移植領域等で必須の免疫抑制剤だが、一方で長期投与により不可逆性の変化である巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)に至り、移植腎機能の廃絶につながる。FSGSに至る前の可逆的な早期の腎毒性を検知することができれば、免疫抑制剤の変更などの予防的な対応が可能となる。 申請者らはCNI腎症モデルマウスを用いて、慢性CNI腎症形成前の早期の段階で糸球体壁側上皮細胞(PEC)に、硬化病変形成にかかわるとされるCD44が発現していること(活性化PEC)を証明した。本研究では移植後のヒト腎生検組織を用いて、CD44がCNI腎症の早期発見のマーカーになるかを検証する。
|
研究実績の概要 |
カルシニューリン阻害薬(calcineurin inhibitor; CNI)は、移植領域等で必須の免疫抑制剤だが、一方で長期投与により不可逆性の変化である巣状分節性糸球 体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis; FSGS)に至り、移植腎機能の廃絶につながる。FSGSに至る前の可逆的な早期の腎毒性を検知することができれ ば、免疫抑制剤の変更などの予防的な対応が可能となる。 申請者らはCNI腎症モデルマウスを用いて、FSGS形成前の早期の段階で糸球体壁側上皮細胞(parietal epithelial cell: PEC)に、硬化病変形成にかかわると されるCD44受容体が発現していること(活性化PEC)を証明した。しかし、ヒトCNI腎症において活性化PECの発現を証明した報告はなく、またCD44の発現機序や活性化PECの役割については不明な点も多い。本研究では移植後のヒト腎生検組織を用いて、CD44がCNI腎症早期発見のマーカーになりうるかを検討し、FSGS病変形成における活性化PECの役割について検討することを目的としている。 まず、令和4年度はヒトにおいてもマウスと同様にCNI腎症において、CD44が発現するかを確認した。次に、CNI腎症の程度が特に重症と考えられる症例を任意に抽出し、CD44の発現頻度と、動脈のヒアリン化肥厚や間質の線維化などに相関があることを確認した。さらに、任意抽出したCNI腎症症例において臨床的な重症例と軽症例に分け、上記のことを検証し、論文発表および、論文投稿を行い掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は北海道大学病院で腎移植を行い、免疫抑制剤としてCNIの投与を行い10年以上の経過追跡を行った症例 (移植前の原疾患がFSGSであった症例は除く)に対して、特に臨床的にCNI腎症の程度が重かったと考えられる症例を抽出し、移植後0時間(移植直後)、1、3、6、10年後の定期腎生検で得られたパラフィン切片を用い、 CD44は組織形態変化に先行して発現するのかを検証した。具体的にはCNI腎症の特徴である①FSGS②尿細管間質線維化③動脈のヒアリン化肥厚について組織学的変化の定量化とCD44発現率との相関について検証したところ、①②③の組織学的な変化よりも前にCD44が発現していることが判明した。さらに、臨床的にCNI腎症の重症例と軽症例を比較したところ、CNI腎症が臨床的に重症であるほど、CD44の発現率が高いことが示された。令和5年度は札幌市立病院で腎移植を行い北海道大学と同様に腎移植後にCNI投与を行った症例について検討したが、新型コロナウィルス感染症が蔓延しており、札幌市立病院の職員ではないため、立ち入りが制限され、病理学的な検討および臨床情報の収集に予定よりも多大な時間を要した。また、札幌市立病院の組織標本を確認した結果、北海道大学病院症例と年代が大きく離れており、病理診断方法も異なることより、今後は症例数は減るものの、検討の精度を高めるため、北海道大学病院の症例のみで検討することとした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は①CD44の発現はポドサイト傷害の程度に比例するのかについてポドサイト傷害時にその発現が低下するPodocinやWT-1に関して、CD44発現率との相関について検証する 1)Podocinの発現: 各糸球体のPodocin発現面積を0~4に半定量化する 2)WT-1の発現: 画像解析ソフトを用いて糸球体の係蹄で囲まれる面積と、同一糸球体におけるWT-1陽性細胞数を測定し、単位面積あたり(mm2)のWT-1陽性細胞数を算出する。次に② ヒトCNI腎症の組織学的変化の中でのCD9の位置づけ:PECや硬化病変でのCD9発現を免疫染色により確認する。CD44との発現箇所の関連を、CD44とCD9の二重染色を行い蛍光顕微鏡で確認する。次に、CD9発現の経時的変化を観察する。 以上を検証した上で、北海道大学病院で腎移植を行い、免疫抑制剤としてCNIの投与を行い10年以上の経過追跡を行った全症例 (移植前の原疾患がFSGSであった症例は除く)に対して上記の実験を行い、CD44がCNI腎症早期発見のマーカーになりうるかを検討し、FSGS病変形成における活性化PECの役割について検討する。
|