研究課題
若手研究
糖尿病性腎症では、腸内細菌叢のバランスが崩れて腸管のバリア機能が低下し、腸内細菌が腸管組織内に侵入して全身に移行し(bacterial translocation)、腎臓を始め全身の臓器に障害を起こすことが示されている。しかしながら腸内細菌を介した腎障害の詳細な機序は明らかになっていない。本研究では最先端の観察技術を用いて、糖尿病性腎症において腸内細菌がどのように腎組織に侵入し腎障害を引き起こすかを、臓器、組織、細胞レベルで可視化し明らかにすることを目的とする。
糖尿病性腎症は末期腎不全の原疾患の第1位を占め、生命予後の観点からも、その克服は重要な課題である。糖尿病性腎症患者では、腸内細菌叢のバランス異常および腸管上皮のバリア機能低下により、腸内細菌が腸管組織に侵入して他臓器に移行したり(bacterial translocation)、腸内細菌由来の代謝産物が体内に流入したりすることで、腎臓を始め全身臓器に障害を起こすことが報告されている。しかしながら、腸内細菌を介した腎障害の詳細な動態については未だ明らかになっていない。本研究では、糖尿病性腎症において腸内細菌がどのように腎障害を引き起こすかを、臓器、組織レベルで可視化することにより、腎障害の病態を解明する。本研究により新たな腎症進展の指標を確立できれば、糖尿病性腎症患者の早期の重症化予測および治療介入に繋がることが期待できる。本年度は前年度より引き続き、腎臓の透明化と三次元画像解析の条件調整を行い、透明化を確認した。健常マウスおよび腎障害モデルマウスの腎臓においてCUBIC法を用いて透明化して可視化し、糸球体および尿細管の特異抗体で蛍光免疫染色を行い、ライトシート顕微鏡により確認した。また腸と腎臓をつなぐ構造物のうちリンパ管に着目し、パラフィン切片においてリンパ管の免疫染色を行い、リンパ管の形態の変化を観察し、三次元でも確認しえた。今後は、腸内細菌と腎障害との関連について、臨床検体を用いて検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
腎臓の透明化及び三次元画像解析による腎障害の可視化について概ね順調に進展していると考える。
腸内細菌と腎機能との関連について臨床検体を用いて検討する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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