研究課題/領域番号 |
22K16222
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
牟田 久美子 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (10728546)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 神経-免疫連関 / 抗炎症効果 / 自律神経刺激 / Tetraspanin-13 / 急性腎障害 / 神経ー免疫系 |
研究開始時の研究の概要 |
急性腎障害(AKI)は予後不良な疾患であるが、未だ確立した治療法はない。今回、AKIの発症要因となる炎症を抑えるメカニズムとして神経-免疫系に注目した。近年、交感神経や副交感神経の刺激が抗炎症作用を介して腎保護作用を示すことが明らかとなっている。しかし、拮抗する作用であるはずの交感神経と副交感神経が、生体でどのように協調して抗炎症効果を示すのかはいまだ不明である。本研究は、マクロファージにおける交感神経と副交感神経の刺激による抗炎症効果の相互作用を解明してその腎保護効果を調べることで、 腎臓の恒常性維持や腎障害の新規治療の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
申請者らは神経-免疫連関による抗炎症メカニズムに着目し, マウスマクロファージのRAW 264に様々な条件下で自律神経刺激を与えることで抗炎症効果を評価した. RAW 264に炎症を惹起させるリポポリサッカライド(LPS)と, α7ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストのGTS-21およびβ2アドレナリン受容体アゴニストのサルブタモールを投与すると,相乗的にTNF-αの値はさらに低下した. この相乗的抗炎症効果を発揮するメカニズムを明らかにすべく, α7ニコチン性アセチルコリン受容体とβ2アドレナリン受容体の下流遺伝子の同定を試みた. LPSとGTS-21またはサルブタモールを投与したマウスマクロファージのRNA-seq解析のデータから, 共通して発現が増強する遺伝子を抽出した. これらの中でもTspan13遺伝子が相乗的抗炎症効果の下流因子であることを新たに見出した. 一方で, 共通して発現が抑制される遺伝子の抽出も行った。炎症性サイトカイン・ケモカインと同様にNFκB抑制因子であるNfkbid遺伝子も抑制されていた。近年, 自己免疫性疾患や慢性炎症における炎症増幅経路として, IL-6 amplificationが注目されている. この経路において, NFκBは炎症を惹起する重要な役割を果たしており, 本成果は自律神経刺激が慢性炎症におけるポジティブフィードバックを抑制し炎症制御に有用である可能性を示唆している. 以上から, 迷走神経および交感神経刺激によって相乗的な抗炎症効果が得られ, その効果に関連する細胞内のメカニズム解明が進んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスマクロファージでの迷走神経及び交感神経刺激による相乗的な抗炎症効果を確認し、重要な役割を持ちうる候補遺伝子を抽出できているため、当初の計画に沿って進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の展望として, 生体内において抗炎症・臓器保護効果が発揮される適切な自律神経刺激を見出す. これまで, マクロファージにおける細胞単位での抗炎症効果を明らかにしたが, 敗血症モデルマウスを用いた予備実験においても, 副交感神経と交感神経刺激による相乗的抗炎症効果が得られることが明らかになっている. 今後は細胞または臓器特異的に自律神経受容体をノックアウトした遺伝子組換えマウスを用いて, 生体内における抗炎症メカニズムの検討を行う.
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