研究課題
若手研究
近年の遺伝子解析技術の進歩により、従来、小児期に末期腎不全に至ると考えられていたネフロン癆などの遺伝性腎疾患が成人の慢性腎臓病患者においても多く潜在していることが指摘されている。しかし、本邦において成人の末期腎不全患者を対象とした疫学データはなく、成人慢性腎臓病患者でネフロン癆を疑うべき臨床像も分かっていない。さらにネフロン癆の発症機序も未だ不明である。研究代表者らは次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝性腎疾患診断パネルシステムを立ち上げ、日本全国からの患者検体を集積している。本研究は、ネフロン癆の新規病態解明、さらには新規治療法開発につなげることを目的としている。
のべ1100名以上が通院する複数の透析病院において、20歳から49歳の間に腎代替療法を開始し、慢性腎臓病の原因となる腎疾患が明らかでない患者90名を対象に、我々が開発した298個の遺伝性腎疾患の原因遺伝子の網羅的解析を行った。その結果、10名(11%)が遺伝性腎疾患と診断された。さらに、これらの患者は 透析導入時に正確な臨床診断がされていなかった。本研究で診断された遺伝性腎疾患の中にはネフロン癆だけでなく、ファブリー病やアルポート症候群など、早期診断および早期治療にて慢性腎臓病の進行を抑えられる疾患も含まれていた。
本研究は慢性腎臓病を対象とした網羅的遺伝子解析として本邦で初めての臨床研究である。本研究の結果、本邦における成人慢性腎臓病患者の中に多くの遺伝性腎疾患が、診断されないまま潜在していることが明らかになった。小児と異なり、成人期に慢性腎臓病として発見される遺伝性腎疾患は、臨床診断が難しいことが示唆されており、網羅的な遺伝子解析が有効であることが示された。 また、本研究では早期治療で慢性腎臓病の進行を抑えられる疾患も含まれていた。慢性腎臓病の原疾患が不明な場合、慢性腎臓病が進行する前に、遺伝子解析を行うことで正確な診断と適切な治療ができ、ひいては透析患者の減少につながる可能性が示された。
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